捻れた本

□ある晴れた日の狂気
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〜ある晴れた日の狂気〜

それは私が学院生だった頃のお話です。
あの頃の私は、そうですねぇ、今と違ってそれなりに友人も居ました。
明瞭快活、とでも言うんでしょうか?
…良く笑う陽気な人間でしたね。

あぁ、勿論今だって笑えますよ。
当時と多少、方向性は違いますけどねぇ。ヒヒ…。

おぉっと、論点がずれてしまいました。
本題に戻るとしましょうか……

私という存在が大きく変わった
あの、夏の出来事を……


――7月上旬 快晴

朝から日差しが強い。
とりわけ日が嫌いという訳では無いがやはり暑さには耐えきれず
私は学院の木陰にあるベンチで涼んでいました。
そこへ、凛とした声がかかったのです。

「隣、いいですか?」
それが彼女との出会いでした。
名はエレナ。
私が通う学院でも彼女の事を知らない人間は居ないと言われる程の、
学院一の美人でした。

「あ、はい。どうぞ」

私は彼女の申し出に同意しました。
特に断る理由なんてありませんからね。

どうもありがとう。と彼女は笑って私の隣に腰掛けました。
その時、ふんわりと香水の良い香りがしましたね。
結局あれは何の銘柄だったかなぁ…?
確か柑橘系のだったと思うんですが…

まぁ、ともかく…

ただ座って涼んでいるだけ、というのもつまらないものですから、
私の方から彼女に話かけてみたんですよ。
話題の内容は若者らしい他愛もないものでしたが、
彼女は快く会話に応じてくれました。

笑う度に瑞々しい唇から覗く白い歯が美しくてね、

あぁ、もっと彼女のことを知りたいなぁ……なんて思ったものです。

俗に言う恋?

いえいえ、違います。

きっとそれは生まれついての知的好奇心です。

その日は休憩時間の終わりまで、彼女と話し込んでいましたっけねぇ…

自然と仲の良くなった私達は
以降も何度か会うようになりました……
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