捻れた本

□吸血鬼ト鏡
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300年程前

主無き城が聳える山の麓、小さな町の果物屋にて…。
「あの…これください」
机上に林檎が2つ並んだ
「…全部でいくらかわかるかい?」
それを見た店主の老人はいたずらに笑いながら
小さな客人に問いかけた
「え、…えっと…」
唐突に質問され、フードを目深に被った少年は思案する。
「ひとつ6だから……12…?」
そう言いながら、小さな手は代金を差し出す。
店主は代金を受け取ると若干の間を挟んでから
「正解!!」と告げ、
林檎を余分に袋へ詰めて少年に手渡した。
「あの…これ…」
少年は困ったような表情を浮かべて袋の林檎を見る
「いいんだよ、
それは問題の景品だからね。」
店主はお茶目に笑いかける
「…」
フードから覗く少年の口元は意外そうにしていたが…やがて、嬉しそうに笑うと
「有難う」と告げた。

「お母さんのお使いかい?」
「う、うん…」
少年は頷く。顔を上げる際にフードがとれないように両手でぎゅっと握り締める。
「そうかい、小さいのに偉いねぇ。」
店主は少年の頭をフード越しに撫でる。

「うちにも君と同じ年頃の孫が居るんだがおてんば盛りでねぇ。
坊やを見習ってもらいたいもんだ」

「うーん…そっちの方が子供らしいと思うよ。

あ、あの…そろそろ行かなくちゃ」
やや照れながら、少年は言う。
「おっとすまないね。
毎度あり!気を付けて帰るんだよ。」

「うん。有難うハンスさん!」
子供は店主に手を振ってから、
袋を抱えて走って行った。
それを店主は笑顔で見送っていたが
手を振るのをやめると
不思議そうに首を傾げた
「はて、名前なんていつ教えたっけ?」
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