夜の本

□茨と仕置き
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鈍い衝撃が走ったような気がする。
意識が暗転し、そして…







そして、目が覚めた。



「さてイバラ…今まで生かしてやってきた恩を仇で返すとどうなるか…もうあなたならわかっているでしょう
なぁ、このクズ妖怪」

千両は穏やかな表情を崩すことなく、辛辣な言葉と共に
地に伏せる茨の頭を踏みにじった。
あの時逃がした少年が、可愛いと褒めてくれた花飾りは崩れ、惨めな有様と化す。
「…うぅっ」

茨は鈍い痛みに苦しげな表情を浮かべるも
商人はそれに何の感情を動かされる事もなく、二度三度と踏みにじると待機させていた専用の仕置き人をチラと見た。

「毎度毎度…懲りない唐変木が。

後はまかせたぞ。愚鈍共。」

薄暗い中にはギラギラと光る無数の目。
そして恐ろしげな唸り声。
「…っ…
…申し訳…ありません千両様。
ですがあの子は…この世界で生きるには向いていないのです!
どうか…どうかあの子にだけはご慈悲を…っ」

茨は怯え、幼い体を震わせながらも哀願するが
千両は振り返る事すらなく退室していった。

仕置き人…彼らの役割上、そう名義するが人ならざる異形の者達…の内、一人が部屋へと鍵をかける。

ゴトリ

重く、無機質なその音が…
無残な仕置きと言う名の地獄の宴の始まりを告げた。
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