太陽ノ教団

□歯車
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〜俺たちは歯車だ。
考える事は無い、ただ回ればいい。
それだけの事だ。〜


自我を持った俺が初めに見たもの。

それは酷く殺風景な、実験室の白い壁だった。

人間が、俺に向かい言った数字。9。

九番目の人工犬妖精を意味するらしい。
それが俺の名となった。
程なくして俺は、
自分の能力を生かす教育を受けながら
同じようにして生まれた
六番目の人工猫妖精、シックスと出会う。

どうにも人工妖精毎に、育成期間がばらつくらしい。

会ったばかりのソイツは、ここで生きていくには向いてないくらいに
純粋だった。

互いに能力は違う故に、別々の教育を受けた俺達だったが
決まって、あいつは俺に会うときは無邪気に甘えるか、もしくは…服にしがみつき、泣きついていた。

お互いに子供だったが、俺は特にそんな気持ちになった事はない。

…けれど、俺の方が、アイツの背を追い越して成長するに連れて…

アイツを

あの頼りない猫を、守ってやりたいと、思っていた。

実験や教育で、
心が傷付いたのならば、泣きつかれたのならば、
うまい具合に納得させてやろうと
無い知恵を絞って言葉を考えたりもした。

しかし
俺の考えが変化するように。
奴にもまた、変化はあったのだ。


昼下がりの施設の庭で

シックスは俺を見ると
じゃれあうように飛びかかってきた。

俺は草の上に倒れ込む。
幼い猫の瞳が、俺を見下ろす。

「っ…いきなり飛びかかるな」
「えへへ。ごめんごめん。
ナインはもう背もあるから、へっちゃらかと思ったんだけどね」

「高いからこそ応える場合だってある」
「ふぅん…そんなもんなんだ」
「そんなものだ…
で、今日も遊びたいと言うのだろう?
何をする。
かくれんぼか?鬼ごっこか?」

俺が遊びを提案すると
シックスの瞳は輝いた。
「うん、遊ぶ遊ぶ!!」

「そうと決まれば、どいて欲しいんだが」

「うぅん、

…このままでいいよ」

「?」

何故だろう
成長も殆どしていないのに
シックスの表情が大人びて見えたのは。

「ナインは、
もう僕より大きいからさ…
多分遊べるね。」

怪しい笑みを浮かべると、おもむろにシックスは
俺の…衣服を乱して、ある部分を…手で触れた

「まて…何をしている」
「何って、
おとなごっこだよ。
ナインは教えてもらわなかったの?」

シックスはさもあたり前のようにそう言いながら、服のボタンに手をかける

日頃から、
俺とは違う場所で

こいつが何を教え込まれたか
何をされたか

ようやくわかった気がした

「ナインは僕の友達だからさ…とっても気持ち良くしてあげるよ」

淀んだ瞳で猫は微笑む。
そこにかつての純粋な友の姿はなかった

「どうしたの?
…ナイン……?」

沈黙したままの俺をシックスは不安げに覗き込む

「…いや」

守る所か、真実を理解する事すら出来てなかった彼を前に

俺は改めて
自らの立場を思い知った
そして…

「続けていい」

俺もまた
考えるのをやめ

淀みの中に飛び込むことを決めたのだった…。

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