太陽ノ教団

□教団にて
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教団の廊下にて、
二人の男が会話をしている。

「おい、見たか?
さっき異端審問官の一人が歩いていったぞ。
その後ろにはあの、上層部のニックだ」

「何だって?ニックの奴、何かやったのか。
前からいい噂は聞かなかったが…」

「いや、そんな様子はなかったよ。

ニックと一緒にいたのも異端審問官のキティ(子猫)だしな。
こりゃひょっとするとニックの奴…」

「オイオイ、あいつ、権力を駆使してお楽しみでもするつもりじゃないだろうな?

俺の知る、ニックのろくでもない噂がまた一つ増えたじゃないか。」

教団の廊下に、二人の笑う声が響いた。

シックスとニックと呼ばれていた上層部の男は、廊下を歩いていく。

「ねぇニックさん。
誰か僕達の噂をしてるみたいだよ」
耳の良いシックスは、先程の噂話を聞き
ニックを振り返った。

「なんと。そいつは参ったな」

「だよねぇ。
その人達、あなたが権力を駆使してお楽しみでもするんじゃないかってさ。

ねぇニックさん。
お楽しみってなぁに?何か楽しいことするの??」

あえて、言葉の意味を知らないふりをしながら、シックスはニックを見上げると尋ねる。

「気になるかい?
後で教えてあげよう…」
ニックの瞳に邪な輝きが宿る

「わぁい、おもちゃでももらえるのかにゃ?

とりあえず、どこ行こうね、お仕事後のデートー♪」
「はは、デートか。
そんな響きは何十年ぶりだろうね。
そうだな…とりあえずお茶にでもしようか」


そして彼等は近くの町の喫茶店へ向かった。

「いくらでも好きなものを食べなさい」

「いいの!!?」

「あぁ、いいとも。
近頃は儲かっていてね…」
意味深にニックは笑う。それとは逆に、無邪気な笑みを浮かべると喜んだ
「有難うニックさん!
この事は今日、二人だけの秘密だねっ」

「まぁ、噂をしていた奴らが居たが…
いずれ濡れ衣でも着せればいいしな」

「うわー悪だねぇ。
……ところでニックさん」
「ニックでいいよ。」

「あ、うん。
ところでニック…
これは噂で聞いただけなんだけどね」
シックスは声を潜めて囁いた
「うん?」

「…教会からお布施…収益金を…巻き上げてるって本当…?
なんか最近、教団内で良く聞くんだ」

小声で尋ねるシックスを前に、

ニックは先程まで
若者に誘われ、いい気になっていた自分が腹立たしくなった。
おおかたは出世狙いや金目当てだと思い、見下してもいた。
それが、まさか探りの為だったとは!
まるで馬鹿にされたかのように、彼のちっぽけな自尊心は傷付けられた

「シックス君。君は、その裏を取るために私を誘ったのか?」
店内に話が漏れないよう
声は潜めたままだが、
その声には確かに憤りがあった。

「ち、違うよ!
僕はニックさんの事を思って…えっと…!」
シックスは慌てて訂正をする。
その眼前にニックはずい、と迫ると言った
「黙れ異端審問の使い走りめが。
俺をたらしこんだら、何でも喋ると思ったのか?思ったんだな。
非常に不愉快だ。
私は帰らせてもらう」

席を立ち、去ろうとするニック。
「待って!」
それをシックスはしがみついて引き留めた
「本当に違うったら!
お願い、話を聞いて!」

「…やめないか、店内で目立つだろう」

ニックは振り向く。
そこには目を潤ませた少年の姿があった。
その目に見つめられ…

「…場所を、変えようか」
と、切り出した。
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