太陽ノ教団

□キオク2
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あれから何年も経った。
落ちるとこまで落ちた。
ただ消される実験動物の身でありながら、
生き伸びる為に何でもやってきた…。

それでも…そんな僕でも

「もー、なんでこう複雑かなぁ!!この教団はっ」

道に迷う事はある。
いや、仕方ないよ。
まだ異端審問官に正式に配属されてから日も浅いんだから。

「参ったにゃぁ。
本気でわかんないぞ…
こんなとこあったっけー」
壁伝いに歩いているが
同じ所をぐるぐる回ってるような気がしてならない。
「なんでこんな時にナイン居ないかなぁ…
使えねー犬だ…」

思わず悪態をつく

そうだ、あいつさえ居れば
匂いで帰り道だってわかるのに…

そんな事を考えていたら
ふわりと…

どこからか風に乗って

花の香りが微かに香った
「いい香り…」

僕は、
不思議とその香りにつられて歩いていった。

やがて
歩いていった先にあったのは…

「わぁ……!!」

かつて
偽りの記憶にあった…
一面の花畑だった。

「あるんだ…本当に」

僕は、その花畑に近付く。
昔、偽りの記憶で僕はこの景色を見た

それは、自分の持つ中で最もきれいな、嘘の思い出だった。

「…綺麗」

これは夢じゃないし
嘘でもない。

僕は思わず花を前に呟いていた。

「本当綺麗だなぁ

…反吐が出るくらい」

…そうだよ
今更こんなものを見ても
何にもなりゃしないんだ。

真っ白な花を見てると

無性に
真っ黒に染まった自分が惨めに思えて
嫌な気分になった。
自分で選んだ道だってのに、勝手なことだね
けど、そんな勝手に身を任せて

花を踏みにじってやろうとした時

「誰かいるの?」

と、声が聞こえた。

振り返るとそこには
花のように真っ白な、長い長い髪の少女が立っていた。

「……」
年は僕よりも下だろうか。
その不思議な少女に目を奪われた僕は

「…君さ、何してんの?」

「お前の真似!!」

…花を踏みにじろうとした片足を下ろせずにいたのだった。
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