伽話

□とろける怨嗟は蜘蛛印
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今は昔の物語。

静まり返る荘園の庭。

玉砂利を踏みしめ男は眼前の妖を見た。

「ついに見つけたぞ…我が一族の仇。」

仇を前に男は刀を握る手に更なる力を込めた。
緊張に嫌な汗が浮かぶ。己に仕留められるのか……。

男とは対象的に妖は平然とした様子で…しかしながら、男に覚えられていたのが心底嬉しそうな面持ちで…
妖艶に笑む。

「ほう…仇とな。
妾の事を倒しにはるばるおいでなさるとはのう!
妖冥利に尽きる喜びよ!!ククク…!!」

「戯れ言を!!
貴様のかけた一族の呪い…忘れたとは、言わせんぞ」

「クク、呪いか…」

呪いと言われ、上機嫌であった妖はふいに考える

呪い…呪いねぇ…
やったような…やってないような…
あぁ…どれだ?

「………すまぬが」

「何だ」

「どなた?」

「Σ何ィ!!??」
男の中で何かが切れる音がした

「いやあの…ほら、妾も昔はワルだったから…やるにはやったかもしれんが…
いやすまん、忘れた訳じゃないのだぞ…ただ…えーっと…
何をやったっけかの…」

男の中で更なる何かの切れる音。

「…我等が一族の雪辱の恨みを偏に忘れるとは良い度胸だな。
一振りで思い出させてくれるわぁぁぁ!!!」

振り被った剣は妖を切り裂いた…はずだった。
しかしながらに手応えは全くといっていい程無い。
怪訝に思い、男は手元の刀を見ると
そこにはかさかさと、
斬られた傷より小蜘蛛が這い寄ってくるではないか…

「クク…痛いじゃァないか。
そう急いては事をし損じるぞぉ?若造。」

「ぬ…ぬぅ!!面妖な技を!!しかしながらに蜘蛛を従えるようになったとは……益々邪悪になったものだな!!」
「…元より蜘蛛だが」
「何を言う…小豆洗い!!」


「…はい?」


小豆…小豆をウォッシュするの?
アズキウォッシングなの?


「我等が一族を常日頃より小豆を洗わねば死に至らしめる呪いをかけたのは…他でもない…貴様の筈!!」
「え…何それ怖い…超妾と関係ない…」

「く…しまったこうしている間にも…」
「話を聞かぬか!!それ妾じゃねぇっての!!」

「うぉぉぉ小豆ぃぃぃぃ!!!小豆アラワセロォォォ!!!!!!」

男は叫ぶと刀を抜くが早いか一目散に駆けていった
「あ…妾の小蜘蛛……」
刀についた小蜘蛛ごと。
「小蜘蛛返せ!!!!!」
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