捻れた本

□蜘蛛と少女吸血鬼と一人の男
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〜期日、場所は伏す。〜

夕暮れ時の街角、
石畳には背丈の違う二人の影が並んでいる。

「ねぇシェイド。
私お腹が減ったわ。
腹ペコよ」
小さな影の持ち主
深紅の瞳に鋭い目つきが意地悪そうな印象を与える少女が、共に歩く青年の袖を引いてそう告げた。
「左様でございますか、カーミラ様」
シェイドと呼ばれた黒く長い髪と、少女と同じ深紅の瞳の青年は返事を返す。
端から見れば、年の離れた兄妹にしか見えない彼等だが
その間柄は主従の関係に他ならない。
「ねぇ私、あなたにレディの口説き方と狩りの仕方は教えたわよね?」
「はい」
「男の場合はどうだったかしら」
「抜かり無く教わりました。」
「そう、じゃあ問題無いわよね。
私ね、今はもう何だっていいわ。
お腹が減って仕方ないの。
早く獲物を連れて来て頂戴!」

十字路の真ん中にさしかかった辺りで。
カーミラは空腹に耐えかね、従者に命令した。

「かしこまりました。」従者は一礼すると彼女の前から姿を消した。
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