ペンライト

□ミドリ色ばいばい
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花束を投げる。決して幸せな意味合いの行動じゃない。

ただ白い部屋で花束を投げた。










宙に舞った赤赤桃黄桃緑。

瞳が潤んで、色彩混ざる。



落ちて、床に叩きつけられ、花弁、葉、茎、跳ねた瞬間、部屋中にはなはなはな。



実家の庭だ。春なのに、夏日のような日々が続く自分の誕生日が近い季節。

その頃は、ひたすら黄色いイメージの時代。どこか青が混ざって、薄暗い色もあった少しだけ幼い時代。

庭の青臭さが漂ってくる。

燕の巣から親が何度も何度も飛び立つ。子に糧を与え、未来を導くため。親ってそうなんだよ。そうであるはずなの。と唐突に思っていたことを思い出す。その頃になって始めて、燕を見てから分かったのは遅かったのではないか。それが今の思い。





あ、今足らないのは。
頭から空っぽの音がするのは。
夜、絶望が行き来するのは。




この頃、燕を見て気づいたせいなんだろう。

今だって、よくわからないのだけど、多分、もっと無償のピンク、あったかいもの、眼に優しい愛が欲しかったんだ。



庭のミドリは、庭のミドリは、
捨てられた自分の存在と反比例して、ムクムクと成長し、自分を隠してしまったのだ。自分より大切そうに育てられた、色彩強く伸びる草に花。本当は強い毒を持っていることも知らず。育て、見ていた彼らにも手がつけられないほど巨大になり、今もその毒の猛威をふるうのだ。







彼らは自業自得。では自分は?


彼らに未来はない。はて自分は?








未来は確かに自分がつくるのだ。誰を責めることもなく、助けられて、感謝して、大きくなるのだ。そのはずなんだ。そうなるはずだったのに…………










バイバイ ミドリ
ミドリよ、私は確かに恨むけど、彼らを恨むけど。

バイバイ ミドリ
ミドリよ、私はそれをおくびにも出さず、生きていかなくちゃいけない定めのようだ。

バイバイ ミドリ
辛くて辛くて息が痛いよ。
バイバイ ミドリ
もう、私を自由にしておくれ。

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