ペンライト

□ばかになりたい
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どこか、胸の奥深くのパーツがするり、と盗まれてしまっているのか。自分には誰もが持っているものが、ひとつ、ふたつ、足りていないのではないか。




口から赤い粒粒が出て止まらなくなった夜のこと。





今は遠くにいる、大きな街に行った友人達の、たまに送られてくる浮かれた文章と、まだ許されてはいないはずの酒盛りの様子を写す画。ああ、元気そうでよかったね。と素直に思うと同時に、好きでもないジャンルの曲を大音量で聴かされたような気持ちにもなる。この感じは多分、寂しくて少しばかり悔しいってことなんだと思う。

さっき吐き出した赤い粒粒を洗面器に集めた。月明かりに照らされてきらきらしている。

この粒粒はとてもヨクないもので、病気なんだ。わかっていたけど、なんだか怖い気がしない。ある日突然治る気がするから。だから誰にも秘密。それにきっと、これは自分にしか治せないんだ。

深夜になっても鳴り止まない雑音に腹を立てて、また粒粒を吐き出した。もう面倒なのでそのままにする。体が暑くて苦しい。


胸のあたりの隙間を埋めにいかなくちゃ。


風呂場の窓から裸足で夜の街を駆けて行く。


海のにおいがするまで、冷静になることができなかった。
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