08/30の日記

00:20
山獄
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獄寺の口元から、ひとすじの煙が空へと昇っていく。
オレンジ色に染まりつつある公園で、ベンチに座る俺と獄寺。
さっきからもう10分以上も、2人の間に会話はない。
痺れを切らしたのか、短くなった煙草を携帯灰皿(前にツナが誕生日にプレゼントしたやつだ)に押し込んだ獄寺が、その煙草と同じように短い言葉を発した。

「で?」

そう問われても、俺は何も言えなかった。何を、どう言えばいいのか、分からない。


念願の甲子園優勝で高校最後の夏を飾った俺は、並盛に戻ってきたその夜、衝撃のニュースを告げられた。
いや、正確に言えば、ずっと気付かないフリをしていた未来を突きつけられた、だろうか。
高校を卒業したら、獄寺とツナがイタリアに渡る。
分かっていたことなのに、まだまだ先のことのような気がして、ずっと、見えないフリをしていた。
お前はどうするんだ?小僧に言われても、何も答えられなかった。
子供の頃からの夢だったプロ野球選手。それを、簡単に諦められるのだろうか・・・と。
野球を捨てて、獄寺と、ツナと、共にマフィアとして生きるか。夢を実現させて、獄寺と、ツナと、決して交わることのない道を歩むのか。
答えなんて、すぐには出なかった・・・。


小僧には返事を保留して、あれから2週間。どうしていいか分からない俺は、帰り道の獄寺を掴まえて公園に誘った。

「で?」

また、獄寺が短く問う。また、答えない俺。
隣で大きく溜息を吐くのが聞こえた。

「用がねーんなら帰るぞ」

立ち上がった獄寺の腕を慌てて掴んで、引き止める。機嫌が悪そうに(明らかに俺の所為だけど)眉間に皺を寄せた獄寺は、しかし、フッと笑って、俺の頭を撫でた。

「つまんねーことで悩んでんじゃねーっての」

予想外のことで手の力が抜けた隙に、獄寺は腕を払って俺の手から逃れた。

「獄寺っ!」
「ごっこ遊びは、もう終わりだ。さっさと夢叶えて、どうせだったら三冠王にでもなってみやがれ」

獄寺はそう言って振り向くと、俺の次の言葉から逃げるように走り去る。
逆光で顔はほとんど見えなかったのに、何故か獄寺の涙が見えた気がした。
獄寺の、精一杯の俺へのエール。それを噛み締めながら、もう一度自分に問いかけてみる。

「そうか!そうだよな!」

ようやく大事なことに気付いた俺は、ツナの家に向かって走り出していた。
小僧に、俺の答えを伝える為に・・・。


Quale sceglie?
〜Sogno o amore〜



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