08/02の日記

16:42
ザンツナ♀
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穏やかで、心安らぐ生活。
そんなものは、自分には生涯無縁なもの。

誰かを愛すること。誰かに愛されること。
そんな誰かなんて、一生現れることなどない。

他人に心を許す。他人にすべてを委ねる。
そんなことをすれば、自分の弱味になるだけ。そんなことは、自分の首を絞めるだけの行為。

今まで、ザンザスはずっとそう思っていた。
幼い頃に、9代目の養子としてボンゴレに引き取られた時からずっと。
周りは、9代目の息子である自分に必要以上に媚を売る者と、決してあからさまにはせずに敵意を向けてくる者、そのどちらかだった。
そんな中で、他人など決して信用出来ないのだと、自分は独りで生きていくしかないのだと、諦めにも似た思いを抱いたのは必然ともいえるだろう。


でも、とザンザスは思う。そんな考えは、今はもう微塵も残っていない。
自分が独りだなど、もう二度と考えることはないだろう。
それは・・・


「ザンザス」

執務室の重厚なドアを開けて顔を覗かせたのは、柔らかな笑顔を浮かべた少女。否、少女のように幼く見えるものの、これでも彼女は半年前に20歳の誕生日を迎えた(本人曰く)“大人の女性”だ。

「どうした?綱吉」
「そろそろ、休憩でもどうかなと思って」

そう言って部屋に入ってきた綱吉は、ゆっくりとザンザスの方へと歩いてくる。近付いてくるのを待たずに素早く立ち上がったザンザスが、綱吉の手を取ってソファへと座らせた。

「用があるなら電話しろ。いくら敷地内とはいえ、あんまりウロウロするんじゃねえ」
「でも、ちょっとは身体動かした方がいいんだよ?病気じゃないんだから」
「それは分かってるが・・・何かあったらどうするんだ」

隣に座る綱吉に手を伸ばし、その大きく膨らんだ腹を撫でる。愛おしそうに何度も撫でるザンザスの手に、綱吉は自分の手を重ねた。

「ありがと、ザンザス。でも大丈夫。この子は、ちゃんと元気に産まれてきてくれるから」
「お前がそう言うなら、そうなんだろうな。だが、重そうな荷物を持ってるのはどういう訳だ?」
「あ、これ?大丈夫だよ、重くないから」

綱吉は提げてきたバスケットを開け、中から取り出した物をテーブルに並べていく。

「午前中、ルッスーリアと、クッキーとマドレーヌ焼いたの。一緒に食べよ?」

ふわりと微笑まれ、ザンザスの心に温かいものが広がっていく。
それが愛だと知ったのは、いつのことだっただろう。
愛する妻と、その腹に宿る愛する我が子。自分はもう決して、孤独などではない・・・



――愛を知る。


穏やかで、心安らぐ生活。
それは、まさに今この瞬間。何物にも変えがたい、優しく甘い毎日。

誰かを愛すること。誰かに愛されること。
お前と出会えたから知ることが出来た、幸せの源。

他人に心を許す。他人にすべてを委ねる。
相手を心から信じているからこそ出来る、信頼の証。

すべては、お前がいてくれるから・・・


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