少年陰陽師 短編

□オマエが一番!
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今、二人の陰陽師が共同で仕事にあたっている。

晴明の孫(というと本人は激怒するが)の安倍昌浩と、筆頭陰陽生の藤原敏次である。

昌浩と藤原敏次の関係は以前に比べ大幅に改善されている。

元々が誤解と言うか、行き違いというか、とにかくどちらが悪いという物ではない。
だからこそ、現状はとても両者にとって望ましいものである。
が、若干 一匹、それに真っ向から異を唱える者がいる。

「えぇい六合!離せっ!せめて一発、奥義・弾丸烈破をっ」

「騰陀よ、いい加減にしろ…」

六合は先程から半ば拘束されつつ理不尽な物言いを続けている、もののけのもっくん(こちらもそう呼ぶと全力で否定するが)をたしなめる。

以前の敏次に対してはともかく、現在の彼になぜこうも敵意剥き出しなのか六合には見当がつかない。
いい加減に疲れてきたこともあり、本人に疑問をぶつけてみた。

「なぜ、そこまで嫌う」
「嫌いだからだっ!」

見事な即答に返す言葉のない六合である。
返答の無いことを良いことに、物の怪はさらに同胞に言い募る。

「だいたい昌浩が何故あんな真面目で融通の効かない、しかし努力で筆頭陰陽生になった年上の奴の供をしなくてはならんのだッ!
納得できん!!」

――ここまで来るといっそ見事だな
思わず遠い目になる六合である。

と、その瞬間。

僅かながら緩んだ拘束を破り物の怪が華麗に宙を舞った。

「受けろッ!奥義・弾丸烈風!!!」

十二神将の理など彼方に追いやった物の怪だ。
六合は捕まえようとしたが、身軽で小柄な相手に振り切られてしまう。

視界の端に、非常に狼狽している昌浩がみえた。
昌浩も突然の事態に動けない様子だった。

珍妙な構えをした白い獣が敏次に迫る。

――が、しかし。

物の怪、渾身の奥義は敏次に炸裂することはなかった。

「全く… 晴明に言われて来てみればこれか」

十二神将の二番手、勾陣である。
彼女の言葉通り、相変わらずの千里眼で事態を見抜いた晴明の命で飛んできたらしい。
だが、この展開に多少ならず怒りを覚えたらしく刺々しい神気が洩れている。

「勾っ!はな「騰陀よ、覚悟するがいい。」

非常に冷え冷えとした科白で物の怪を遮ると同時に、二人の姿が呆気に捕られていた昌浩達の前から消える。


その後、燃え尽きた灰のようになった物の怪の姿が安倍邸で見られたという…

→あとがき
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