少年陰陽師 短編
□そばにいる
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「はぁ。」
風音は何度目かのため息をついた。
というのも、ようやく落ち着きを取り戻したハズの道反で連日のごとく繰り返される争いが原因だった。
今、この聖域に留まっており自らの想い人でもある十二神将 六合。
彼に対して、守護妖たちは何を思ってか戦いを挑んでいるのである。
しかも本気で。
「彩輝…。本当はどう思っているのかしら。」
戦いを収め、謝るたびに「気にするな。」と言ってはくれるが、時々 不安になってしまう。
万が一を考えては、ありえないと打ち消す、といった作業を先ほどから延々と繰り返していた。
しばらく物思いにふけっていた風音は、鳥の羽ばたきを耳にして、顔上げた。
「嵬。どうかしたの?」
何やら不機嫌そうな鴉の守護妖が肩に舞い降りてきた。
『その… 巫女がお呼びです。』
「母さまが?」
一体何事だろうか。
「わかったわ。すぐに行くけど、何かあったの? 嵬。」
先ほどから明らかに機嫌が悪い。
『いえ、大した事ではありません。では。』
そう答えると、嵬は黒い翼をはためかせ、何処へ飛んで行ってしまった。