デジモン短編

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――8月1日。

 夏の陽射しは月光に変わり、一日の疲れを癒す人々でビアガーデンは賑わっている。
 その一角に、太一達は集まっていた。

「もう10年かぁ」

 目の前にあったグラスを煽る太一。

「太一、じじくさいぞ」
「なっ!?」

 ヤマトもやれやれといった体で、ビールを飲む。

「大体、毎回おんなじセリフ言ってるわよ」
「まぁ気持ちは解らなくないですが…」

呆れ顔の空に、苦笑を浮かべる光子朗。

「確かに10年は感慨深いね」
「ワタシもそう思う!」

 微笑を浮かべる丈に、お酒も入り上機嫌のミミ。
 いつものメンバーである。
 ヒカリとタケルは大輔達と集まっている。
 今年は成人する二人を含めた6人で飲む事になっていた。

「いや、酒も煙草もできるような年になったんだなぁ、ってさ」
「もう少ししたらアイツラのために働く事ができるわけだ」

 大切なパートナー達の生まれた、あの冒険の大地。

 この10年で多くの人間にパートナーデジモンが現れた。
 人々のデジモンへの関心は良くも悪くも増加している。
 今までは自分達の両親が中心になり、活動してきた。

「これからは私達の番、という事ね」

「正しい知識と理解、お互いの秩序の安定、と課題は多いですが」

「だけど、他の誰かに任せておけないからね」

「ワタシ達の子供がデジモンと仲良くやっていける世界にしなきゃ!」

「本当に生きる上でのパートナーだからな」

「あの冒険でアイツラから貰ったもんを、返していかねぇとな!」

 太一は一同を見回す。

――大丈夫だ。俺にはこの仲間達がいる。

 そこに、研修中のプレートを下げた店員がやってきた。

「はい!生中3に、焼酎1つ、チューハイ2つで〜す」

「待ってました!」
「って、丈!お前が焼酎飲むのかよ」
「城戸家は代々酒豪なんだそうです」
「それより乾杯しましょうよ!」

 より盛り上がり出した面々に、控えめな声で店員は尋ねる。

「…ご注文は以上でよろしかったでしょうか」

「ええ。ありがとうございます」

 空の返事を聞きほっと息ををつく店員だったが、すぐに奥から呼ばれた。

「貴仁、これ3番!」
「わかった、昌浩!」

 せっせと働く少年達をよそに、6人は先程以上にはしゃぐ。

「たいちぃ〜♪」
「うわっ!?空、オマエ焼酎飲んだだろ!!」
「しらにゃ〜い」

「さっヤマト、もう一杯…」
「も、もう勘弁してくれ…」


「コーシローくん♪」
「ちょっ、ミミミ、ミミさん!?ここでそれは!」

 こうして8月1日の夜は更けていくのだった……

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