デジモン短編

□くるとし
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12月31日。

大晦日。

机には空き缶が転がり、数時間前まで二人で飲んでいた証が広がっている。

ベット脇のデジタル時計は夜10時を表示していた。

「……もう0時になっちゃう」

重いまぶたをこすり、一緒に寝ていた『夫』に眼をやる。

付き合い始めた頃よりたくましくなった体にしばし見とれる。
ほどよく引き締まった胸に抱かれて寝るのがヒカリのお気に入りなのだ。

「起きて、大輔」

と言ってみるも、起きないのが大輔らしい。

「もぅ!」

自分の声くらいには反応して欲しいものである。

そのくせ寝言では「ヒカリちゃん…」なんて言って、ヒカリを抱き締めるのだから怒るに怒れなくなる。

とはいえ新年は二人でお祝いしたい。どうしたものか。

「そうだ…」

兄の太一が言っていた通称“幸せな起こし方”を思い出したのだ。

久しぶり会った兄夫婦は子どもを授かり、幸せの絶頂である。
今ごろは家族で新年を祝っているだろう。
その時の話に、仕事疲れで空が寝過ごさないために考えた起こし方が出てきたのだ。
空は顔を真っ赤にしていたが…

すやすやと熟睡中の顔に近づいて、


――……。

「っ!!?」

「あ、起きた?」

効果てきめん。
文字通り飛び起きた大輔だったが、直ぐに状況を理解する。

「もう〜ヒカリちゃん〜」

「ん?」

「……ヒカリ」

「よろしい♪」

結婚してもう1年が立とうとしているが、未だに大輔はヒカリの呼び捨てに慣れないでいた。

「今の、太一さんのヤツだろ〜」

「えへへ♪だって大輔、起きないんだもん」

「ま、幸せだったけどな」

そう言うと、ヒカリを抱き締める。

「ほら、もう年が明けちゃうよ」

「そうだな」

ベットから起きようとする大輔だったが不意に何かに気付いたように振り返る。

「ヒカリ」

「? どうかした?」

すっと表情を引き締めて、ヒカリに向き直る。
こうなった大輔はヒカリにとって媚薬の様な物で、胸が自然と高鳴る。

「今年もよろしく!」
「…うん///こちらこそよろしくね」


――また新しい年がくる。
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