とある日の夢

□新たな日常の幕開け
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何が起こったのか理解する頃には、既に私は捕えられていた。そしてされるがままに連れて行かれたのは、とある大きな部屋。
ゆっくりとそこを見回してみる。予想通り、私が一方的に知っている人たちがいた。


「う゛おぉい、そいつが侵入者なのかぁ?」


耳に響く大声を出す銀の長髪…スクアーロ。


「ししっ、にしては全然それっぽい雰囲気ないけどな」


天才王子のベルフェゴール。


「そうだね。お金も持ってそうにないし」


アルコバレーノ、バイパーことマーモン。


「ボスの害になる奴なら…!」

「ちょっとレヴィ。落ち着きなさいよ」


ボス命のレヴィに、言葉だけ見ればヴァリアー紅一点のルッスーリア。
そして、私の正面に鎮座しているのが、先ほど会ったというか見つかったザンザス。彼は騒いでいる幹部と違って、ずっと黙っている。
…さて、どうしたものだろう。ここに来てピンチというものに陥ってしまった。陥りたくなかったのに。


「それで、あなた、まず名前は?」


一人悶々とどうしようか考えていると、ルッスーリアが声をかけてくれた。
未だ不審人物扱いではあるが、そうやって話しかけてくれたのは少しありがたかった。


「チサ…と申します」

「チサちゃんね…。どこかのファミリーに所属してた、とかある?」


スッとサングラス越しでもわかるくらい、ルッスーリアの雰囲気が刺々しくなる。それに呼応するように、騒いでいた幹部たちも黙り込んでこちらの様子を窺うようになった。
間違った答えは許さない、という空気が感じ取れた。


「…ありません」

「本当に?」


間髪入れずにそう問われた。
だけど、こればっかりはどうしようもない。


「はい」

「………」


私がそう答えると、皆揃って口を噤んだ。
疑い、戸惑い。そんな視線が痛くて仕方ない。
緊張で手が震えてきた。こんなに緊張することなんて、生まれてこのかた初めてかもしれない。
重苦しい空気の中、それを打ち破ったのは、ボスでも幹部たちでもなく、私を拘束していた隊員だった。


「ボス」


静かな時に出された声だからか、とてもはっきりと耳に残った。
バッと私はそちらを振り向く。水色の少し長い髪と青い瞳。とても端正な顔立ちをしている、青年。
こんな人、私は知らない。


「少し、よろしいでしょうか。皆さんは席を外していただきたいのですが」


青年がそう言った瞬間、ざわめきが起こる。といっても、ボスであるザンザスがいる前だからか、小さい声ではあるが。


「う゛ぉい、アレン、てめぇ…なんのつもりだぁ?」

「別に何もねーよ。アンタは黙ってろ」


ピシャリとスクアーロを一蹴できる辺り、そこそこは地位があるらしい。
…あるにしてもこの態度は凄いとは思う。


「…おいカス」

「はい」


彼…アレンを見ながら、唐突にザンザスは口を開いた。


「今の話、呑んだ。…おいカスザメ。人払いしろ」

「!…ボスさんよぉ、いいのか?」

「俺の命令が聞けねぇってのか」


ゆっくりとザンザスが右手を掲げる。
それを見たスクアーロは、慌てて皆に声をかけた。
ぞろぞろと、当事者である私までもが外に出るよう、促される。
ついていこうとすれば、唐突にアレンが私に耳打ちした。


「やっと会えたな」

「!」


振り返ろうとしたが、他の隊員の人に引っ張られ、それは成されなかった。
部屋の外に出された私たち。再度起こるざわめきの中、私は考える。


――あの、声


彼の存在は知らない。彼の顔は見たことない。
でも、知ってる。彼の、声は。


――夢に出てきた…


あの声だったから。




→後書き
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