とある日の夢
□夢のお告げ
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窓際の席。それが私の座席。
「――が――で…」
数学教師の説明が右から左へ流れていく。そんな初歩的なこと、聞かなくてもわかるから、聞く必要はない。
そんな自分でも、通知表の態度点は高いのだから、おかしな話だ。
「…なんだかな」
頬杖つきながら、私は窓の外をただただ眺める。
こんな灰色の世界、つまらない。こんな世界にいても、意味はない。
人生を終わらそうか、考えたことがないわけではない。実行には移さなかったが、別にこの世に未練があるわけでもない。必要に迫られれば、いつでも終わらせる気がする。
そんな考え方をしているからか、時折変な夢を見るのだ。その夢は決まって「別の世界」を見せてくれる。今なんかよりずっと色鮮やかな世界を。
――ねえ
…ほら、今もそう。きっと私は、数学教師のお経まがいな説明に、目を閉じかけているのだろう。
――いつになったら、答えをくれるんだ?
その問いは、ここ最近特に言われるようになったものだ。
いつになったら、か。そう言えば今までちゃんと返事をしていなかった。夢なのだから当たり前なのだが、この世に未練があるのかもしれないと思ってしまう。
そう思うと、なんだか胸がムカムカする。あれだけ否定しておいて、この期に及んでやっぱりこの世界が好きでしたなんて、笑えない。
――アンタの答え、決まってるんだろ?
決まっているはずだ。そうでなければ、ならない。
――なら、さっさと答えてくれ
この夢は、何をせっぱつまっているのだろうか。そんなことは私には一切分からないのだけれども。
だが、そんなことはどうでもいいと思う。だからなのかもしれない。この時ばかりは、何故だかこの夢に、返答をする気になれた。
「私は…」
ポツリ、と紡がれる私の言葉。
ゆっくりと、開かれる私の口。
「私は、この世界じゃない、別の世界に行きたい」
それが、私がこの世界といられた、最後の瞬間。
→後書き