戦乱組曲-Overture-
□プロローグ
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「今日の魔物やクリシアによる犯罪の被害は甚大である!しかし、嘆く事は無い!我々にはそれを阻止するための力がある!………」
「…ったく…話し長げぇっての…」
「よしなって……誰かに聞こえたらどうするの?」
「なぁ、フォルカ。逃げ出さねぇ?」
「…サリヴァンはでけぇ奴だ」
「がたいだけだろーが……」
「お前は相変わらず辛抱のたらん奴だな。仮にも忠誠を誓った方だろう?」
「そーだけどよ…なんかもう暇で暇で…あ〜体がなまる」
日本の遥か西方に存在する大型ギルド「守護者」
ここはその総本部である。今日は先日入ったばかりの兵士達にギルドの長であるサリヴァンからスピーチがある。
……のだが、警護を任されていたとある小隊は壁に隠れてぼやいている。
「でも、実際すごい長いんだよね…これ」
背中に折りたたみ式の弓を装備した少女。ジェネがため息混じりに呟いた。
が、すると何処から現れたのか間髪入れずに女性の声が
「おい。貴様ら、任務中だというのになんだその態度は!サリヴァン閣下の御前だぞ!」
叱責というのはこういう事だと辞書に載せたい位の叱声を浴びせているのは、守護者のナンバー2である。
レイナ司令官
その人である。
「ちぇっ……うるさいのが来た」
わざとらしく反抗的な態度を取っているバカが…いや、青年がこの小隊の斬り込み隊長であるティボルトである。
「……貴様…反逆罪に訴えてもいいのだぞ?」
「あぁ?」
二人の間に見えぬ火花が散っている。
「この男の忠誠は行動で示させる」
仲介というか、ティボルトの弁護をしているのは小隊の魔術士ギオームである。
「ふん…まあいい。
フォルカよ、指令だ。
グラン・ツール宮殿周辺に魔物達が現れた。早急に退治してもらうが、宮殿への被害だけ御免被りたい。
宮殿を守りながら、魔物達を討伐しろ」
「てめぇの命令なんざ聞かねぇよ」
ティボルトがまだぼやいている。
「サリヴァン閣下直々の指令だ」
「…………」
先程からずっと瞑想をしている男がようやく目と口を開いた。
彼の名はフォルカ・レイハンス。
この四人で構成された小隊のリーダーである。
「……よし。いくぞ。
ティボルト
ジェネ
ギオーム」
「うっし!」
「はい!」
「了解しました!」
彼らを待つ「運命」はこの任務により少しずつ動き出していた。