Sーhort


言葉足らず
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 言葉足らず




 「うぅ〜…寒いわねぇ〜」

 放課後。
 学校からの帰り道。

 真冬の凍えるような寒さの中
 、暖かそうなコートとマフラ
 ーに身を包みながら、あかね
 が話し掛けてくる。

 「おめー修業が足りねぇんじ
 ゃねーのかー?」

 こんくらいの寒さで情けねぇ
 ぞ〜と、すかさずあかねをか
 らかうように言ってやる俺。

 こう言えば、絶対にこいつは
 のってくるから。

 「なによー!そんなの別に関
 係ないでしょー!」

 …ほらな?

 あまりにも予想通りの反応な
 ので、なんだか嬉しくなる。
 ついニヤニヤしていると、「
 なに笑ってんのよ〜?気持ち
 悪いわねぇ〜」
 と、怪訝な表情でこっちを見
 てくる。

 失礼なヤツだな。

 「べっつに〜。なんでもねぇ
 よ」

 俺はおめーのことをよくわか
 ってるんだな〜。と思ったら
 嬉しくなったからつい…

 なんて言えるワケねーだろっ
 !


 しばらくは俺のことを怪しん
 でいたあかねだったが、その
 うち寒さに耐え切れなくなっ
 たのか、しきりに両手を擦り
 合わせて息を吹き掛けている
 。

 相当寒いみてーだな…。

 こんな時、大丈夫か?とか一
 言掛けてやったり、さりげな
 く肩を抱いたりできたら…っ
 ていつも思う。

 もしそれができたら、俺達の
 仲もちょっとは進むんだろう
 なぁ。

 でも、ナイーブな俺にはそん
 なことできそうもない…

 はぁ〜…

 でも、手くらいは繋ぎてぇよ
 なぁ…

 あかね寒そうだし…それに比
 べて俺の手はあったかいワケ
 だし…

 なんとか…

 とか思ってたら、自然とあか
 ねの手に目線がいってたみた
 いで、またもやあかねが怪訝
 な顔でこっちを見てくる。

 …まずい!バレたかっ!?と
 焦っていたら、

 「なによ?あたしの手になん
 かついてる?」
 とか聞いてくる。

 …相変わらず鈍いな…。

 この鈍感さに感謝したことも
 あったけど、伝わらなくて虚
 しくなったこともよくあった
 よな〜…

 「…なんでもね〜よ」

 本日二度目の『なんでもねー
 よ』

 あかねを誤魔化そうとする時
 、俺は決まってこの台詞を言
 う。

 普通ならバレバレな嘘や誤魔
 化しも、鈍いあかね相手なら
 通じるんだよな。(たまにび
 っくりするくらい鋭い時もあ
 るが…)

 それはありがたい時もあるん
 だけど

 …たまに心配になるんだ…。

 こんなんで外歩かせたら、騙
 されて変な壺とか買わされて
 来たりしそうだ…とか。変な
 奴に騙されて、お人好しなあ
 かねはそいつに同情して…と
 か。

 気が付いたら大変なことにな
 ってた。って、コイツなら本
 当にありえるからなぁ…

 まぁ、こんなことばっかり考
 えてたら、俺は心配でコイツ
 を一人で出歩かせらんなくな
 っちまうから、なるべく考え
 ねー様にはしてるんだが…。


 それに、俺達の仲が進展しね
 ーのは俺達が素直じゃねーか
 らってのもあるけど、こいつ
 の鈍感さも絶対に原因のひと
 つだ…

 だって、俺だって(本当に稀
 にだが)素直になろうとして
 る時もあるんだ。そしてそれ
 を、それとなく行動に移した
 りもしてるんだ…!

 だけどあかねは全くわかって
 くれねーんだよ…


 そうだっ!

 そういえば、あかねの部屋で
 二人っきりで宿題をしてた時
 だって、何度かいい雰囲気に
 なったことがあるんだ…!!そ
 れで「今ならイケるかも!?
 」と思ってキスしようと顔を
 近付けたら、アイツなんて言
 ったと思う!!?


 「なによ?いくら下手に出て
 も宿題はやってあげないわよ
 ?宿題は自分でやらないと意
 味ないんだからねっ!」

 だぜ…?

 俺が頭下げようとした様にで
 も見えたんだろうか…?

 その後は、さぁ〜早く終わら
 せちゃいましょ〜!とか言っ
 て、目線はアッサリ机に向か
 う始末だ…

 本当いいかげんにわかれよな
 〜!!って大声で叫びたくなっ
 ちまったぜ、あの時はさすが
 に…


 …でも、何も行動を起こさな
 いと、俺達は一生このままの
 ような気がする…

 それは俺が耐えられないワケ
 で…



 俺はコホンッとわざとらしく
 咳払いをしてから、あかねに
 声を掛けた。


 「…あかねっ!」

 「ん?なに〜?」

 「…さ、寒いな〜?」

 「どっちなのよアンタは…。
 さっきは「修業が足りねーん
 だよ〜」とか言ってたくせに
 」

 「だ、だからっ、その…」

 「?」


 だ、だめだ言えねーっ!

 『手繋がねぇか?』なんて…


 「あ、あの…!」

 「なによ?」

 俺がなかなか言わないからか
 、キョトンとした表情から、
 だんだんと怪訝な表情になっ
 てきているあかね。

 まずいっ!
 早く言わねーと怒りだすかも
 しれねーっ!

 あかねは短気だからな…

 でも、そう思えば思うほど焦
 っちまって言葉が出てこない
 …!!


 「だ、だからだなーっ、その
 …!!」

 「もーっ!だからなんなのよ
 !?ハッキリ言いなさいよね
 っ!?」

 「だあぁぁ〜っ!!!だからっ
 !寒いんだろっ!?オメー?」

 「なっなによ、いきなり?そ
 りゃあ寒いわよ。さっきから
 言ってるじゃない?」

 「だったら俺が温めてやるっ
 つってんだっ!!」

 「………へ…?」




 やっと言えたーっ!!
 俺もやればできるんだっ!!こ
 れでやっと手を繋ぐことがで
 きるーっ!!!

 …と、拳を握り締めて自己満
 足に浸っていた俺だったのだ
 が…


 「な゙!!?なに考えてんのよ
 アンタはっ!!!」

 と、あかねが急に真っ赤にな
 って焦りだした…、というか
 怒りだした…?


 「な、なんだよ!?俺はただ
 、オメーが寒いっつーから仕
 方なく、温めてやるっつって
 んのに…!」

 「ななななにが温めてやるよ
 っ!?…こんのヘンターイッ
 !!」


 どっかーん!!


 「なんでだよーーーっ!!」






 ******






 どうしてこうなるんだ…?


 結局、頑張りもむなしく、ど
 こかの家の屋根まで蹴り飛ば
 されてしまった俺…

 なんだっつーんだよっ!!?人
 がせっかく素直になってやっ
 たっちゅうのに!!!

 ったく!!本当にワケのわから
 んヤツだぜ…!!!



 …でも、どうしてだ?

 どうしてアイツ、真っ赤にな
 って怒ってたんだろう…?

 別に俺、変なこと言ってねー
 よな?あかねが寒そうに手を
 擦り合わせてたから、温めて
 やるっつっただけじゃねぇか
 。

 そうだよ。
 手を温めてやるって言っただ
 け…




 ……?



 …あれ?



 その瞬間、冷や汗が背中を伝
 った…



 俺、なんて言ったっけ?

 たしか…『温めてやる』って
 言ったんだよな…?

 『手を』温めてやるって…




 
言ってねぇぇ〜〜!!

 俺、『手を』ってつけ
 るの忘れてたぁーっ!!



 …そうか!だからあかねのヤ
 ツ真っ赤になってたんだな…

 って!冷静に分析してる場合
 じゃねーぞっ俺!!!

 ここここれはマズイんじゃね
 ぇのかっ!?

 どどどうしよう…!!?

 絶対あかねのヤツ誤解してる
 よな…?

 べべ別に変な意味で言ったん
 じゃねーのに!!

 そりゃあ、あかねがいいって
 言うなら俺は喜んで温めてや
 るが…って!なに考えてんだ
 俺はっ!!!これじゃホントに
 変態じゃねーか!!

 と、とにかく!俺は変な意味
 で言ったんじゃなくてだな!
 優しい俺は、寒そうにしてい
 るあかねが可哀相だったから
 、温めてやろうと思っただけ
 だ!!

 あくまでも『手』を!!

 下心なんてまったくない!決
 して!!

 そう説明すればあかねだって
 わかってくれる!!

 きっと…!!


 …たぶん…


 いや…まぁ最初に2、3発く
 らい殴られるのは、覚悟しと
 いた方がよさそうだが…


 っつーか、口聞いてくれねー
 かもしれねぇが…


 …こりゃあ、しばらくは俺達
 の進展もお預けになりそうだ
 な…


 そんなことを考え、ブツブツ
 言いながら肩を落として帰っ
 ていく俺の後ろ姿を、町内の
 人達がおもいっきり白い目で
 見ていることなど、全く気付
 いていない俺だった…



 end...



 ■あとがき■

 だいぶ前に書きかけだったや
 つをやっと全部書き上げまし
 た〜*

 おかげで真冬の設定なのに、
 現実はもう桜が咲いてますが
 …まぁ、気にしない02vv(を
 ぃ)

 ってか、ほのぼのにするつも
 りだったのに、なぜギャグっ
 ぽくなってしまったんだろう
 か…?

 しかも当初の設定では、二人
 仲良く手を繋ぎながら帰る予
 定だったのに…ι

 いつもこんなんで、ごめんね
 、ウチの乱馬君…^^;笑





 

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