Ｓｰhort
□今のままで‐sideＡ‐
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今のままで
‐sideＡ‐
「あかねちゃん。これ着てみ
てくれないかしら？」
「これは…浴衣ですか？おば
さま」
「そうなの。おばさん最近裁
縫に凝っててね、作ってみた
のよ。下手なんだけどね」
「そんなっ!すごく綺麗です
よっ!お店に売ってるのより
も可愛いです!!」
「そう言ってもらえるとすご
く嬉しいわ。よかったらもら
ってくれる？あかねちゃんの
イメージで作ったのよ。」
「えぇっ、こんなに可愛いの
に…!!でも、いいんですか…
？こんな良いもの頂いちゃっ
て…」
「もちろんよ!あかねちゃん
のために作ったんだから。」
「ありがとうございます!大
切にしますねっ」
「うふふ。気に入ってもらえ
て嬉しいわ。」
薄いピンクに黄色い蝶がちり
ばめられた柄の浴衣は、本当
に可愛くて…
あたしのイメージで作ってく
ださったって言ってたけど…
こんなに可愛いから…なんだ
か恥ずかしいな。
…おばさまって本当に優しい
な…それに美人だし、おしと
やかで料理上手で…
やっぱり
おばさまみたいな人が理想の
女性なんだろうな〜って最近
よく思う。
あたしのお母さんも、優しく
てすっごく素敵なお母さんだ
ったし、かすみお姉ちゃんも
お母さんによく似てて、なん
でもできる人だしなぁ〜
…どうして、あたしはお母さ
んの子供で、かすみお姉ちゃ
んの妹なのに、こんなにお転
婆で不器用なんだろう…？
あたしも、おばさまやかすみ
お姉ちゃんみたいに素敵な大
人の女性になれたらなぁ〜…
＊＊＊＊＊＊
「おはよ〜」
「おはよ〜あかね。今日は早
いんだねー？」
「たまにはね。毎日毎日遅刻
じゃあやってらんないからね
」
「それもそうだね。今日は乱
馬君ちゃんと起きたんだ？」
「うん。今日はちょっとだけ
優しめに起こしたんだけど、
そしたら意外にあっさり起き
たの。びっくりしたわ」
「あははっ!よっぽどびっく
りしたんだねー。けど、珍し
いね？どうして今日は優しく
起こしたの？」
「えっ!?えっと、…なんとな
く…かな…」
「ふ〜ん？」
「あ、ほらっ先生来たよ」
「？う、うん…」
…言えない…
『おしとやかな女の子になり
たいから』なんて…
でも決めたんだから!!
おとなしい女の子になってみ
せるって!
だから、今日はあたし暴力も
振るわないし、乱馬と喧嘩し
たりもしないんだから!
…なのに…
…そういう時に限って、乱馬
のヤツ…やたらとあたしに絡
んでくる…!!
なんでほっといてくれないの
よーっ!!!
だけど、もう決めたんだから
!
もうあいつの言うことなんて
気にしないわっ!!
＊＊＊＊＊＊
「あれ？あかね。乱馬君は？
」
「…逃げられた…!悔しい〜
!」
「いつもホウキぶつけてひる
んだところを捕まえてるのに
ね？今日はやんなかったんだ
？」
「う、うん。今日はね。」
「？…あかね、どうかしたの
…？」
「へ？どーして？」
「いや、なんか今日はいつも
より元気がないような気がす
るんだけど…」
「え？そんなことないよ？」
「だって…なんか今日は少し
おとなしくなかった？」
「えっ…！？…あたしがおと
なしかったら、変…かな…？
」
「ん〜…変じゃないけど、あ
かねらしくないというか…私
はいつものあかねの方が好き
かな〜？」
「どーして？」
「やっぱり明るくて、周りに
元気を振りまいてる方があか
ねらしいからね」
「ん〜…そっか…」
「なんかあったんなら相談し
てよ？いつでも話聞くからさ
っ」
「う、うん。ありがと。」
やっぱりあたしにはおとなし
いのなんて似合わないのかな
…
でも、おばさまやかすみお姉
ちゃんみたいになりたい…
これは、ずっと前から…
…小学生の時から、ずっと願
っていたこと…
あの時は、東風先生に振り向
いて欲しくて…
ただそれだけを願いながら髪
を伸ばして…
先生の前ではできるだけおし
とやかに振る舞ってた…
けど、今は……
やっぱり、アイツのため…な
のかな…？
自分でもよくわからないんだ
けど。
理想の女性に近付きたいなっ
て思ったから今日は少しだけ
おとなしくしてみたけど、や
っぱり『あたしらしくない』
って言われるとちょっと複雑
だなぁ…
あたしの理想はやっぱり、あ
たしとは正反対で…
理想は…
なれないから理想なのかもし
れないな…