空に浮かぶ雲は

緩やかに流れ行く


どこまでもどこまでも

空の傍らに在りつづける。


雲の終焉は常に空に看取られる。



例え空が望まなくとも






『鎮魂の儀式』










「チッ」

「っ…」


爆音の中、僕と綱吉は瓦礫と化した壁に隠れていた。そこらじゅうに倒れている人の山。
それには敵のファミリーも味方のファミリーもいた。


「どうして、こんな…」

「………」


作戦通り奇襲は成功した。

しかし作戦に誤算は付き物で今回はそれが大きな被害を発した。


「アレは厄介だね」



言うなれば壊滅を目前としたボスの最後の悪あがき。

死を迫られた人間は新たなボックスを使い、中からは小さな虫みたいな物が無数に飛び出した。
そしてそれに触れると爆発を起こす。
威力は強く誘発を起こし莫大な威力を発揮する。


「どうするか…」


ずっと此処にいるわけにはいかない。

「今、応援を頼みましたから…」

ぽつり、と呟く綱吉は小さく震えていた。


やっぱり此処に君は似合わない。


誰よりも心優しい君。


敵であろうと倒れていく人間に胸を痛めてるんだろう。



「応援?そんなの待ってられない」

被害を増やしたくないんだろうね。
でも、その間に敵が逃げるか体制を整えるかもしれない。

下手したらこっちが……

『君』がやられるかもしれない。


「っ体制を整えなきゃ、犠牲が増えるだけです!」

「その間にこっちがやられたらどうするのさ」

「…っ」

「…君はやっぱりボスに向いてない」


休息はした。

君がこれ以上悲しまないように僕は動くよ。





例え此の命尽きようとも





「なに、する気ですか?」

急に立ち上がった僕を真っ直ぐと見るブラウンの瞳。

僕の好きな君の瞳


「言ったでしょ?」


真っ直ぐと睨みつける。


「待ってられないって」

「っ!ま――――…」


伸ばされた手と制止の声を無視して敵の下へ突っ込んで行く。





大丈夫。


君が見てくれてるなら

君を護るためなら


僕はもっと強くなれる。




君の為に散るならば
何時だって本望だよ。










バァァァ――――…ン
















「っ」

ドサリ、と敵のボスが倒れる。

「っぁ、はぁ…」

それを見届けボックスに武器を戻し、綱吉の元に近づいていく。

「雲雀、さん」

青ざめた顔で近づいてきた綱吉。
瞬間、頬に痛みが走った。

「死ぬ気ですか…」

強い瞳で睨みつける綱吉に、叩かれたのだと理解した。


「…死のうがどうしようが僕の勝手じゃない」

「赦しません!」

「煩い。君には関係な――――っ!」

「!?」



突然感じた、殺気。


倒したはずの敵が最後の気力を振り絞ったのか辺りに響く銃声。



咄嗟に綱吉を突き飛ばし、胸に走った熱い痛み。




飛び散る朱。



崩れ落ちる己の身体。



冷たい土の感触。



暗くなる意識。



「――ゃ…!――きょ……!」



耳に届いたのは愛しいキミノコエ


キミハ無事ミタイダネ





身体から力が抜けていく。


「っ……よ、し」



君を護ることができて

よかった。





頬に冷たい感触がした。

ぽたりぽたりと肌に落ちる。

雨、かな…




もう瞳すら開かない。




あぁ出来るなら
君のような青い空の下

散りたかった。



TO be continue....








H21.2.24  きな子


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