愛歌

□抱き締めた花の香で鎮めて
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「…雅遠様、怒ってます?」

「…なにがだ?」

 子供達と別れ、各々玄武と朱雀に騎乗し、のんびりと白河邸へと向かっている。その最中に、保名は前を行く雅遠に声をかけた。

「姫君を貶めるような発言をした子どもに、怒ってます?」

「いいや。怒ってないぞ」

 声音はいつもどおりだが口調はとげとげしい。……間違いなく怒っている。

「…やっぱり怒ってますね」

「怒ってない」

「………豆腐屋のイサムがあそこに」

「どこだ?」

「…怒ってるじゃないですか」

 呆れた風情で息ついた保名に、むっと閉口し、雅遠は馬を止めて振り返る。

「………桜姫はな、可愛くて優しくて傷つきやすいんだ。…そんな桜姫を酷く言う奴があるか」

「……その溺愛ぶりは賞賛に値しますよ…」

 まぁ、主の彼の姫君へ対する愛の深さは計り知れないのは知っている。何せ敵対する家同士だというのに、彼女しか娶らないと断言したのだから。
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