連歌
□幸福の風 −かつて流れた古の悲歌−
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『貴方に月の恩寵があらんことを』
夢に呑まれれば必ず聞く、言葉。―――それを紡ぐ、優しくて暖かな、声音。
愛おしい。
そう、これはきっと、私の―――…。
緩やかに目覚めを促され、ローズレッド=ストラウスは起き上がる。
「………またこの夢か」
一体何なのだ、と呟きたくなる気持ちを堪え、ストラウスは寝台から降りる。同時に、扉が開いた。
「………アーデルハイトか」
「ごっ、ごめんなさい。驚いた?」
「いや…」
苦笑交じりで言葉を濁し、ストラウスは虚空を見つめる。
「そういうわけじゃないんだ。…ただ、思い出せそうなところまで出ていた何かを…忘れた」
その言葉に、申し訳なさでアーデルハイトの顔が歪む。慌ててストラウスは責めてるわけじゃない、と言って、笑った。