知りたいの
□甘い甘い
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「おはようございます、市丸隊長」
「お、イヅル。お早う」
珍しく隊長机に向うあなたに、山積みの贈り物。
「ほとんど隊長宛てですよ。僕には10個ほどだけ」
「なんや?このけばけばしいピンクの山は」
「今日は現世で言う“バレンタインデー”だそうです。なんでも好きな異性にチョコレートを送るイベントだとか…」
「ああ、あれか。皆毎年よう頑張るなぁ。そこに置いといてくれんか」
「…はい」
―いけない、タイミングを失ってしまった。
隊長宛ての品を運びながら考える。
実は僕も昨夜、張り切って松本さんに“チョコレート”の作り方など教わっていたのだ。
完成品は、完璧とはいかないがなかなかの出来で、いま死覇装の胸元に仕込んである。
(でも、これだけ反応が薄いんじゃ…)
あんまり、欲しいとか思って無いんだろうか。
ましてや僕みたいな、男からじゃ。
「イヅ?どないした」
「いえ!何でもありません。今お茶お持ちします」
平静を装って、笑顔で部屋の奥に向った。
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