「綱吉ッ!!助けて!」
ドタドタと階段を駆け上がり、俺の部屋の扉をバンと開けたのは・・・俺の幼馴染だった。
まだ寝ているのに・・・お構いなしに自分の状況を説明してくる。
「あのね、なんか・・・おかしいの!」
主語が無いため、何を言っているのかさっぱり分からない。
まだ、寝たい・・・
そう思いながら、仕方なく起き上がる。
「取りあえず、着替えるから下で待って。」
勿論パジャマのままだったので、着替えたい。
それを聞いて、少し落ち着いたのか・・・いや落ち着いたといっても若干おとなしくなっただけ、だけど。
「分かった。早く来てね!」
母さんに話しても、どうせ相手にされないだろう・・・。
多分、あらあら・・・大変ねー、などと言われるだけ。
容易に想像がつく。
適当にタンスからジーパンとTシャツを出し着替えた。
今日は、何があったんだろうな・・・と思いながら。
階段を下っていると、さっき想像していた言葉と全く同じものが聞こえてきた。
「あらおはよう、今日早いのねー。」
若干驚かれながら言われた。
「おはよう。どこかの誰かさんに、起こされたから。」
私!?
と叫びながら、自分を指差していた。
「ツナが起きてないから駄目なんだよ!」
もう朝の8時なんだから。
・・・休日ぐらい寝ててもいいと思ったのは俺だけだろうか。
「そんなことは、どうでもいいから!聞いてっ!」
俺の睡眠はどうでもいいの一言で一蹴にされた。
悔しいことに・・・もう慣れたけど。
「はいはい、今日は何だよ。」
ちゃんと見ててね・・・。
そう、前置きされた。
言われた通りじっと見つめていると、ありえない光景が広がった。
「ね・・・?絶対おかしいでしょ??」
自慢げに言われても・・・困る。
人間の体が空中に浮くなんて・・・。
「歩けるんだよー。」
すごくない!?
楽しそうなのが気に食わない。
全然困ってない、そして多分自慢するために来たんだろうな・・・。
「それ・・・いつから?」
「今日起きたら、ベットからずれたところに・・・浮いてたの。」
普通だったら落ちてるはずなのに全然痛くなくて、良かったー。
「じゃあそのままでいいんじゃないの?」
そう告げると、眉を顰めながら答えた。
「初めはそう思ってたんだけど・・・やっぱり人として危ないでしょ?」
確かに・・・、正論だ。
「どうすればいいかな・・・?」
取りあえず降りてほしい。
心理的に受け付けない。
「日にちが経てば戻るんじゃない・・・?」
適当に言っただけだったのだが、どうやら本当にそう思ったらしい。
「そうだねー!じゃあ今のうちに楽しんどかないと!」
はしゃぎながら、俺の手を取った。
「・・・何?」
「一緒に空の旅へゴー!!」
触れたものまで浮かせることが出来るらしい。
俺の体は触れられた瞬間に5センチ程浮いた。
「じゃあ奈々さん!行ってきますー。」
いってらっしゃい、と言いながら母さんは俺たちに手を振った。
ちょっとは不思議に思わないのか・・・そんなことが頭の中を埋め尽くした。
「あっ!絶対に手離さないでね。」
多分離したら落ちるから。
ニコニコと笑いながら爆弾発言をしてくれた。
「・・・。」
顔は真っ青になっているだろう・・・。
手を強く握った。
そうこうしているうちに、建物が見えないくらい上空まで来ていた。
「よし、歩こう。」
自己完結しながら、歩き出した。
勿論俺も一緒に。
見えない板の上を歩いているような感覚。
「これ・・・お前の力が無くなったら落ちるんじゃない?」
「・・・うーん・・・ちょっとやばいような気がする・・・。」
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