niji
□希求
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逢いたい、と願った。
歩いた。
雨が降った。
青く澄み渡る空は
黒く淀んだ灰色の厚い雲に覆われ
冷たい雨水が
頬を打った。
衣は濡れ重くなり、鮮やかな色はうっすらと濁る。
傘など持ち合わせていなかったが、足を止める気にはならなかった。
雨が降る。
小さな丸い木の橋に沢山の雨粒が叩きつけられる。
そして
ぽつん、と。
そなたが居た。
「…濡れるぞ。」
そう言って着物の裾で頭上を覆うと、再度あの瞳に出会った。
柔らかな安堵に。
柔らかな嬉しさに。
柔らかな胸のざわめきに。
私は出会った。
湿気を、水分を随分と含んだ森の中で、古びた寺の中で、私達の逢瀬。
やはり
そなたは迷い子だった。
私と同じ迷い子だった。
そのせいなのだろうかーー?
この、
躯全てを傷め、
しかし求めずにはいられない気持ちは。
そなたと別れた後は、やはり空は朱く染まっていた。