niji
□希求
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雨が降っていた。
青く澄み渡る空は
黒く淀んだ灰色の厚い雲に覆われ
冷たい雨水が
頬を打った。
衣は濡れ重くなり、鮮やかな色はうっすらと濁る。
傘など持ち合わせていなかったので、着物を羽織り走った。
雨が降っていた。
小さな丸い木の橋に沢山の雨粒が叩きつけられる。
互いの衣の端が交わった。
振り返れば
ぽつん、と。
私が居た。
否。
私ではなく
私と同じような瞳をした
−−幼い迷い子のような瞳をした人が居た。
「…濡れるぞ」
そう言って羽織りを渡せば、頼りない揺れた視線と私は出会った。
そして
そのまま
私達は別れた。
確かに
何故か
惹かれた。
見上げれば朱く色づいた空。
雨は止んでいた。