niji

□『3月6日』の後に―――
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カサカサカサ――ガタンガタン・・ゴォォォ・・―――キシ・・ギ・・―――


花弁とは言い難い、硬い人工物をくっつける音、それを取ろうと動かす体の音、衣服の擦れる音、遠くの電車の音、建物の軋む音・・・。


沢山の音が聞こえる。
けれど、静かだ。


カサ――


零一はまた花弁を取る。


あんなに遠くの電車の音も、喧騒も聞こえるのに、自分の呼吸音すら煩いのに。

何故か、秋の音だけは聞こえない。

ずっと手元しか見ていないが、秋は、すぐ横に、衣服だけを隔たりにしたこの空間に、居るのに。でも、秋の呼吸、衣服の擦れる音さえ聞こえない。存在感さえ感じられない。
零一は手を止めた。否、止まった。
どうしても気になった。

「―――あ・・・」


『秋』。


そう、彼の名前を呼ぼうとした。だが、それは阻止される。

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