niji

□『3月6日』の後に―――
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「・・・何で来るんだよ・・・。」
「進歩の無い発言だね、ゼロイチ。昨日と殆ど、いや、『一緒』って言って良い程の言葉言ってる。」

確かに、言われてみれば同じ事を言ったかもしれない、と零一<レイイチ>は己の言動――この場合、同じ様に嫌な顔をして迎えた筈だから、『言動』だ――を振り返ってみる。


『だからって何で来るんだよ。』 


――――・・あぁ。確かに言ったな。“だから”って言葉がないだけで、そっくりそのまま。

れど、それを言うなら目の前にいる、顔だけは、顔“だけ”は可愛く、少女にも見えてしまう、この古くからの友人(らしいが、断じて零一は認めていない)の方こそ進歩がないのではないだろうか。いくら『ゼロイチって呼ぶな』と言っても未だに直さない、と言うか、あえて直さないと言った方が正しいかもしれない。――とんだ捻くれ者である。

相変わらず、秋<アキ>は飄々としていて、いきなり来ては、マイペースに人の家に勝手に上がり、ちゃっかり冷蔵庫から自分の分だけ麦茶を出して飲んでいる。

それを横目で見て、文句の一つ、いや、二つ、三つ、四つ―――・・・取りあえず文句は際限なくあるので、その中の何個かを言ってやろうかと思い口を開きかけたが、言ったところで十倍返し以上にされ大ダメージを受けるのは結局自分の方なので、零一は賢明にも口を閉ざした。いい加減、零一も学習したのだ。

足の踏み場の無い小さな部屋の真ん中に、ドッカ、と座り、秋が来て中止にさせられた内職を再開する。するとお茶を飲む手を止めて、あと半分以上残っているグラスを持ったまま、秋は零一の横に胡坐(あぐら)をかいて座った。

「何、ゼロイチ。また契約取れなかったの?」
「またって、言うな。またって。」

さして起こった風ではないが、めんどくさそうに言う零一の態度に、クスクスと笑いながら秋は眼の前の行為を見つめる。

「これ、納品はいつ?」
「再来週の頭。」
「ふーん。」

ちらっと、零一を挟んで秋が居る方とは反対側を見ると、山積み、というには程遠い量の出来上がったと見られる偽の花が積んであった。だが、どう見ても30〜40本くらいしかない。

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