niji
□散りゆく花は美しく
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今日もまた、月は輝いている。
澄んだ冬の夜に、輝く物は一段と美しい。
「重衡殿。」
男―――『重衡』は呼ばれ、声のした方へ振り向いた。
「経正殿。」
呼ばれたように、相手――『経正』の名を呼ぶ。
「何か御用ですか?」
ふわりと重衡は笑い、問うた。
経正はそれを見て、彼の実兄『知盛』との違いを身に染みて思った。知盛に同じ事をすれば、振り返りもされず、「・・・・何だ・・?」と興味なさ気にあしらわれるだろう。
―――(どうしてこの兄弟はこうも真逆なのでしょうか。)
余計な考えが過ぎったがそれを顔に出す事はなく、問いに返答する。
「いえ、用はありません。ただ、気になりまして。」
「気になる?」
経正は、先程の重衡と同様に笑い、縁側から足を降ろし、桜の下に居る重衡に近づいた。
「何をご覧になっているのかと。」
そう言い、重衡と同じ位置に行き、同じ様に顔を上にあげ
る。
「何を見ているのか、当ててみて下さい。」
「え?」
すぐに答えてもらえると思っていたので、一瞬驚きの為静止した。しかしすぐに、はは・・、と笑い、「そうですね・・・・」と答えを探し始めた。