niji
□現世の逢瀬で
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ふわり、と肩が暖かくなった。
「風邪ひくよ。」
「っ・・・・!?」
声に驚き敦盛は目を見開いた。後ろを見ればさっきまでベッドに寝ていた恋人が、にこ、と微笑んで立っていた。
肩には女物の黒いカーディガンが掛けられていた。
「ぁ・・・すまない。有り難う。」
謝罪の言葉には起こしてしまっただろうことへの気持ちも入っていたが、望美は気づかずに「どういたしまして。」と屈託のない笑顔で笑った。
「何、見てたの?」
「あの・・・月を・・」
「月?あ、満月。気づかなかった。うわぁ、綺麗だね。」
「あぁ・・・。」
―――綺麗。あぁ、綺麗だ。とても。
そっと、望美の頬に敦盛の手が添えられた。まるで儚いものを触るように優しく触れた。
―――(思い出した。)
「?敦盛さん・・?」
「本当に・・・綺麗だ・・・」
「・・敦も・・・」
不意にぎゅう、と強く、まるで、全てを壊すように、きつく抱いた。
―――貴女は月だ。
私の心を暖かくしてくれる、この月と同じだ。
遠く、遠く、果てしなく遠いあの月と同じだ。