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□キャンバス
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今度は体全体を反転させ、彼の全体像を俺の瞳が捕らえた。

相変わらずの瞳に、相変わらずの彼を見つめる。
少し色素が薄いとは言え、髪はちゃんと黒いし、眉も瞳も勿論黒で、肌だって黄色人種らしい色をしている。なのに、どうしてこんなにも全てが薄いのか。

存在感と言うものが感じられない。口数があまり多くは無いのだから、強く有るとは思っていない。それでも異様に少ない存在感。

今だってほら、こうやって目を閉じた瞬間、彼の存在はすぐに消える。目を開けても、すぐには彼を認知できない。
生命力がないわけではないだろうし、欲もないわけではないだろう。

でなければ、両親に捨てられて、あの路上で俺が幼い彼と出会うまで、約3ヶ月。そんな長い間生きていられるわけが無い。
なのに、何故こんなにも彼を感じられないのだろう。


あぁ、またきつく、痛む。首をジワジワと締め付けられるような、痛み。


『なぁ、解ってるのか?俺はお前を捨てようとしてるんだ。』


ゆっくりと惨めな問いを掛けても、彼の瞳は揺れ動きもしない。


『・・・・じゃぁな。』


それきり、俺は振り返ることなく、彼から遠ざかっていった。

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