original

□ある晴れの朝
2ページ/2ページ



僕には日課がある。
一つは朝起きたら部屋を見る事。

理由は簡単。
僕の居場所だから。

朝日が部屋に入ると淡いオレンジ色に変わるこの部屋が、僕のたった一つの居場所だから。
夜に見た、暗い黒い孤独が暖かい陽射しに照らされている事を知りたいから。


二つ目は彼が眠っている間に甘える事。
もう一つは『おはようのキス』をする事。
彼の存在がそこにあるのだと確認する為に。
僕がここに居るのだと確認させる為に。



今まで何回の夜と朝を二人で過ごしてきただろうか。
それでも拭えない恐怖がそこに必ず存る。すぐ隣だったり、遠くの方だったり。

たぶんきっとそれは、ずっと拭えないだろう。
幸せが強くなればなるほど、この幸せが手放せなくなるから。幸せを失う事をずっと恐れ続けるだろう。


だから僕等は縋る。
互いが互いに縋る。
消えないでくれと。
逃げないでくれと。


神に縋る。
この温かな手がずっと傍にありますように、と。


この先、互いに離れた幸せがあるのかも知れない。
けれど彼がいないのなら、それはきっと本当の幸福にはならないだろう。

今以上の、彼のいる幸福には足りないだろうから。
だから、そんなものはいらないから。

どうか、ずっと傍に居させて下さい、と。


縋る。
全てのものに縋る。
時間に、風に、太陽に、日常に。




僕等には日課がある。


互いが互いを必要として生きている事を証明する為に。


互いが互いを愛する事に幸せを感じながら。


『おはよう』や『おやすみ』。


そんな日常を感じながら。


                          

●END●

前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ