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□ある晴れの朝
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白い部屋に明るい陽射しが差し込む。

「・・・ん。」

僕は小さく身じろぎし、ぼんやりと覚醒し始めた頭でカーテンと、部屋を一通り見つめる。

清潔感を重視した内装で、最小限の物しか置いてなく、色も白で統一してある。
質素という言葉がとても合う部屋である。だからきっと、見る人が見ればとても寂しい部屋だ。
そんな部屋をじっと見つめる。

それが僕のここ最近の日課だ。

そしてそれに満足したら、音を立てないようにベッドの中の温もりに頬を摺り寄せる。
すると、まるでそれを待っていたかの様に温かな手が僕の髪を梳いた。

「・・・・嘘寝してたんだ。」
「違うよ、声をかけるタイミングが解らなかったんだよ。」

クスリ、といつもの低い、けれど落ち着いて透き通っているヴォイスが頭上を掠めた。
僕が普段意地を張って自分から甘えたりしないから、彼はたまに意地悪を仕掛けてくるのだ。だから僕も意地悪を仕返す。

不意にその気持ち良い腕から逃れ、ベッドから降りようとする。するとまたその心地よい腕に掴まり、元の場所に引き込まれる。勿論、僕は彼がそうする事を十分承知の上。彼も僕の意地悪だと解っている。

「まだおはようのキスもしてないのに、何処へ逃げるんだ?」

直接、その低ヴォイスが鼓膜に送り込まれ、耳にチュッ、と音をたてキスをされた。

「嘘をついたから、そのお返しだよ。」

口を尖らせながら言って上目遣いで睨むと、不意に彼が顔を顰めて、今度は切羽使った掠れた声を耳に送り込む。

「馬鹿野朗。そんな目で見られた食べたくなるだろう?」
「・・・なっ!!」

さすがにその、正直すぎる申し出に驚き、僕はその腕から今度こそ本気で逃れ、ベッドから足だけを出して背中を彼に向け、ホッと息を吐いた。

「冗談だよ、冗談。こっちにおいで。」

逃げた僕に、彼は慌てて左手で布団を上げ、ポンポンと右手で先程まで僕が横になっていた場所を叩く。そちらをゆっくり見ながら疑心暗鬼な目を僕は向けた。

「冗談って声じゃなかったけど。」
「可愛くないナァ。」
「男だし、僕。」

皮肉で言った彼に、僕も皮肉で返し、また背を向ける。
不意に背中から彼のため息が聞こえたかと思うと、ガシッと、彼が僕を抱きしめた。

「っ、ちょっ・・」

驚いて後ろを向こうと首を捻ると、すぐ眼の前に整った彼の顔が有り、僕は一瞬だけ怯んでしまった。もう何十回、何百回と見ているのに、未だに彼の顔を直視するのに慣れない。あまりに綺麗だと、その端整さが恐ろしく思える。
その隙に、彼の唇が降りてきた。

「っん・・。」

先程の耳と同じ様な小鳥が啄ばむ様なキスを二・三回された。

「おはよう。」

すぐには彼が言った言葉が理解できず、しかし混乱した頭でこれが『おはようのキス』の事なんだと理解すると、僕も彼に同じキスをした。

「・・・おはよう。」

慣れないけれど、僕は彼の黒曜石みたいな瞳を見つめながら言った。すると優しい笑顔を返してくれた彼は、またキスをくれる。瞼に、頬に、唇に。

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