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□バレンタインデー
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「バレンタイン 〜夏の日々・番外〜」



2月14日。
セイント・バレンタインデー。世間は色めき立っている。
TVのどのチャンネルを回しても、ケータイサイトを見ても、ネットを開けても、どこもかしこもチョコのことばっかり言っている。
そして、俺の横でも色めき立っている奴が一人…。

「やっぱさ、こういうのは手作りって言うのが一番いいよね。どんなに高いものも良いけど、俺のために作ってくれたっていうのがやっぱすっごく感動するよね。」
「………」
「チョコケーキもいいよね。でも、生チョコもおいしそうだなぁ。最近のは甘くないのが多いみたいだけど、俺は甘い方がいいなぁ。なんで、男は甘いものが嫌いなんて、そんなこと言われてるんだろうね。」
「………」
「…ねぇ、俺の話聞いてる?」
「…俺は甘いの嫌いだ。」

約10分前から、こんな調子だ。
ソファに腰掛け車の雑誌を見つつ、はぁ、と一つ大きくため息をついて、呆れたように横に座る相手を見遣る。
すると、ガシッと両肩を掴まれ、切迫した顔を近づけられる。

「俺は好きだよっっ!!」
「……うるさい」

しゅん、と見えないはずの耳と尻尾を項垂れる。俺はうっとおしくなってその両手を振り払った。

「なんなんだよ、さっきから。」
「…今日は、バレンタインだよ。」

下唇を突き出して拗ねたようにして俺を軽く睨む。

「知ってる。」
「…チョコだよ。」
「“女”が“男”にあげるんだろ。」
「最近は、逆チョコっていうのもあるんだよ。男の人が好きな人に渡してもいいんだよ。」
「どっちにしろ、男が好きな“女”に渡すんだろうが。」
「……」

そこで文句は尽きたのか、彼はぐっと口を結んで止まってしまった。俺は再びため息をついて雑誌に視線を落そうとすると、

「わかった…」

そう呟いて彼は俺から離れた。
俺が怪訝な顔してそちらに向くよりも先に彼は後ろを向いてリビングを出ていってしまったので、彼がどんな顔をしていたのか俺は分からなかった。























「いただきまーす。」
「…いただき…ます…?」

あのまま出かけたかと思ったら1位時間ほどして、彼は帰ってきた。その手には白いスーパー袋があり、今日は俺が晩御飯担当だったのだが、いきなり「俺がやる。」と言われ、急きょ彼が夕飯を作ることになった。
そして、目の前には美味しそうな夕飯がテーブルの上に広がっている。相変わらず、料理がうまい。しかし、俺は不思議そうな顔でその料理と彼を交互に見た。
てっきりチョコの菓子でも作るのだろうと踏んでいたのだが、全くチョコのものは見当たらなかった。

「どう?うまい?」
「…うん。」

しかも、あれほど項垂れていた彼は今は見る影もなく、にこにこと笑顔を振りまいている。

…こういう時は気をつけた方がいい。

と、心の中で警戒しつつ、俺は夕食を済ませた。




夕食を済ませてお互いに風呂を入り終わり、リビングのソファで寛いでいると、彼が俺の首に腕を巻いてきた。甘い香りが漂っている。
俺が振り返るとそのまま唇を奪われた。

「…ん」

口の中にカカオの香りと甘い匂いが広がる。

「うまい…?」
「…甘い…」

口が離れると唾液が細く一本の線でお互いの舌を繋いだ。

「口の中にチョコ入れたんだろ?すっげ甘い…。」
「智樹(トモキ)がくれないなら、俺があげようと思って。」
「…甘いの嫌いだって言っただろ?」

何かしてくるろうとは思っていたがこういうことなのか、と俺は考えながら、皿を片づける時にキッチンに大量のチョコがあるのを思い出した。

「うん、知ってる。だから、ブラックにしたんだよ。」
「?ブラックじゃないだろ。すっげ甘かったぞ。」
「これは、自分にあげたチョコ。ちゃんと智樹用が別にあるよ。」
「…なんだよ、にやにやして。」

彼のにやついただらしない顔に俺は嫌な予感がして、半目で彼を見る。
その瞼にちゅっと音を立ててキスをして、俺の体から彼は離れた。

「俺のチョコ、受け取ってね?」

するとパジャマのズボンをずらして彼の下半身を俺の前に曝した。

「っ――――!?」

俺は思わず彼の姿を凝視して、その場に固まってしまった。

「…な、…」

パクパクと口を震わせて、言葉に詰まる。
だって、こんなこと思わないだろ。
彼のモノ全体にチョコがついているなんて。おそらく自分で溶かしてチョコを塗りつけたのだろう。

「……」

頭が痛い…。
俺は言葉を失って、頭を抱えた。

「智樹、俺の気持ちだよ。たくさん、食べてね?」

ぐいっと顔を上げられ、彼はその“チョコ”を俺の口元にそっと押しつけてきた。既に半勃状態だったらしく、少し大きくなっているそれの固さが俺の唇を通して伝わる。

「誰が食うかあっ!!」

俺は顔をずらし大きな声で拒否したが、昼間と同じように両肩を掴まれソファに押し倒されると、無理矢理下着ごとズボンを剥ぎ取られた。俺はさらに嫌な予感がして、足をばたつかせるも両足首を掴まれ、大きく開かされてしまった。

「じゃあ、下の口でもいいよ。」
「はぁ?!おい、やめ、あっんぅっ!」

彼は憮然としてそう言うと俺の制止などお構いなしに、俺の中にたっぷりのチョコを送ってきたのだった。






その後、朦朧とした意識で来月のホワイトデーにチョコを返すことを無理やり約束させられた。


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