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□三世之縁(さんぜのえにし)・後半
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ドンドンと、心臓が痛い。
「…っく、ぁ…っ」
痛い。
「もっと声、出せよ…」
痛い。痛い。
「もぅ・・っやめ・ろぉ・・・」
痛い。痛い。痛い。
「ひっ―――――っっ!」
男は、喉奥からひしゃげたような、掠れた甲高い声を絞り出すように叫び、果てた。
内部(ナカ)を支配している男も、自らが虐げている男の腰をぎゅっと力を入れて握り、そのまま躊躇うことなく果てた。
「・・っ・・・は・・は・・」
どちらのものかも解らない荒い息遣いが、物音一つしない静寂な部屋に響く。薄気味悪いほど、時間はゆっくりと流れている。
「・・・・はや・・く・・出てけ・・っよ」
肩を上下に動かし、皺くちゃになった布団に顔をぴったりとくっ付けながら小さく、しかし強い意志を持って言い放つ。
「っぐ!」
直後、瞳孔を開き、四肢を硬直させ、男は唸った。
「へぇ・・・。まだ減らず口立てられんだなぁ。」
前髪を無理矢理上に引っ張り上げ、布団から顔を引っぺがして、その耳元に低く男は囁く。恐怖と恥辱に、全身に鳥肌が立った。
「なぁ・・。自分の立場解ってる?今、テメェは俺の下にいるんだぜ?解ってる?」
「ぃっ―――いた、ぃ」
諭すような柔らかな声音で囁き、だが、確かに侮蔑の意味を持って捲くし立てるように言い、聴覚を、そして片手で容赦なく思い切り中心を握り、男を嬲(なぶ)る。
「・・・このまま、『コレ』、握りつぶしてやろうか?ガキ作れねぇなんて跡取りとして用済みだよなぁ・・・。」
「やっ!やめっっ――!!」
激痛が走る。ヒュッと喉が鳴る。再び力を入れられ握られた中心は、恐怖の為に余計に縮こまる。快楽の為に火照った身体も、すぐに冷え、冷や汗を流す。その必死の様子を見て、男はクククッと搾り出すような声で嘲笑った。
「あ〜ぁ。こんなに縮こまってやんの。」
嘲笑いながら男はフッと力を抜き、そう言いながら中心をこんどは丁寧に撫でていく。
「・・っは・・・」
男は、目を瞑り、唇を噛んだ。それは、痛みが快楽に変わることを知っていたからだ。そんな現実を受け入れたくなかったからだ。
痛みが和らぎ、じんじんと、どくどくと、熱が脈を打つ。
「くぅっ――」
声を漏らさないように、血が滲むほど、きつく唇を噛み締める。身体がふるふると悔しさと快楽で震え、帯で縛られた両手首が畳みに擦られ、痛む。
「叫べよ。」
男は、抑揚のない声で言った。
「叫べよ。本宅に聞こえるぐらい。親父や母さんに聞こえるぐらい。聞かせてやれよ。テメェの本当の声を。」
「――ぁああっっ」
ぐんっ、と男は腰を打った。優しく撫でていた指も、痛いほど性急に動かし、強弱をつけることなく追い立てる。余りの性急さに男は目から涙をとめどなく流し、口を閉じる事もできず、舌を揺らし、噛みそうなくらいだ。
「ほらっ――っもっ・・とっ啼けよぉっっ!」
男の声が渦巻く。憎悪が溢れる。
男の感情に同調するかのように、がくがくと腰が揺れる。視界が揺れる。
「ぃいっ!・・ひ・・く・・ぅぅっっ!!」
「啼けよ。鳴け…泣け、なけよ…。」
「はぁっっ――あぁ・・ぁぁっっ―――!」
ぶるぶると、男は叫び、震えた。
「・・・テメェの全部…俺がこの手に、握ってんだぜ?解ってんのかよ…?」
「っは・・なん・・・」
ぼたぼたと涙を流し、涎で顎を濡らし、眉間を寄せて、後ろを振り向く。わなわなと唇は痙攣をする。
「こうやって・・・」
パンパンに膨れ上がり、今にも暴発しそうな中心をギュウっと握りしめ、満足そうな笑みを浮かべる。
「わか・・・わか・・た・・から・・・」
「アンタは俺の下で啼いてりゃ良いんだよ・・・兄さん・・・。」
「っ―――――――――――!」
叫びは声にならなかった。
男は再び、律動を始めた。しかし、その手にはしっかりと中心が添えられ、握りしめている。塞き止められた快楽に、眼の前が真っ白になる。自分が今、声をあげているのか、どんな状態にいるのか、解らない。
「ぁぁぁぁ・・ゆる・・ゆる・・し・・・っっ助け・・・っひぃ――ぃっっ!」
ただ
怖くて怖くて
自分がどうなってしまうのか
どうしたら良いのか
解らなくて
短いはずの夏の夜も
なぜか
すごく長くて
苦しくて
痛くて
痛くて
痛くて―――――