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□たとえばすべてにそむいても
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燃え上がるような恋をして
その人の事以外
何も考えられなくなって
自分の役目も忘れて
愛し合った。
結果、引き裂かれてしまった恋人達。
今日は一年に一度、二人が会える日。





「もしもさぁ」
「うん?」
侑士の部屋のベランダに立って、空を仰ぎながら俺はつぶやいた。
「もしも侑士と俺、一年に一回しか会うなって言われたらどうする?」
半分冗談で、半分本気の質問。
見上げたら侑士は笑って俺の隣に立つ。
昼間の暑さはほんの少しだけ、夜の闇と風にさらわれて。

「岳人は?」
逆に聞かれて驚いた。
風呂上がりの、まだ濡れたままの侑士の髪から雫がポタリと落ちる。
「俺は…」

ロマンティックだとか言われる空の二人。
離れてしまったのは自分達のせいだ、結局。
ロマンティックなもんか。

全て忘れて逢瀬を繰り返す程、
お互いの事、愛してたんだろ。
だったら、最後まで。


「俺は逢いに行くから。どんな事しても」
そっと距離を縮めると、
侑士は手をつないでくれた。
「無理だって言われようが誰に罰受けようが、俺侑士に逢いに行くよ」
「…岳」
「天の川だろうが何だろうがさ。ムーンサルトでもかまして飛び越えるよ。だから」
俺をさらって。
一緒に逃げよう。

いいかけた言葉は、
暗闇に消えた。
侑士が降らせるキスの雨は、
呼吸も出来ない位に激しくなっていく。
昼間の太陽みたいに、
熱くてたまらなかった。


「俺もな、大人しく1年も待ってへんから」

会うな言われた次の瞬間に会いに行って抱き締めたる。

キスの合間にそう言った侑士に、俺は笑った。
すべてに背いても、俺達は離れない。

きっと。




部屋に入る時、
見上げた空は雲に隠れていた。

それはまるで
一年にたった一度の、
二人の切ない逢瀬を隠すみたいに。

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