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□さくらふぶき
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お花見しようなって言ってたけど。
今日はダメなんだって。
昔の友達が来るからって。
プチ同窓会なんだって。
面倒臭がりの侑士が行くんだから、仲良しなんだなって言ったら、笑ってた。

桜が満開。
こんなに天気がよくて、
気持ちいいのに。
心にポッカリ穴があるみたいに、寂しい。
風が吹く度にはらはら花びらが舞う。
来週にはもう全部落ちちゃうんだろう。
もう少しだけ、咲いててくれないかなぁ、なんて思った。
「…帰ろ」
桜並木の下を、歩く。
風に舞う桜吹雪。
侑士と見たかったって、思ったら。
「…ゆうし」
見間違えるわけない。
桜吹雪のその向こうに、侑士が立ってた。
「花見しよ思て来たんやけど…もう帰るん?残念」
手持ちの袋には俺の好きなお菓子類が沢山。
目の前に立たれたら、自然に見上げる形になる。
「…同窓会は?」
「すぐ抜けたで」
「…仲良しなんだろ?」
「岳人の方が大事やもん」
「…買いすぎ」
「いっぱい食べるやろ?」
「……すれ違ってたら」
「あ、考えてへんかった」
「………」
「アホやな…泣かんでもええやんか…」
だってね侑士。
桜が綺麗なんだ。
一緒に見たかったんだ。
一人で見に来て
寂しかったんだよ、侑士。
「…目にゴミが入ったんだよ…」
「はは、そか。ほら、岳人の好きなイチゴのケーキも買ったんやで。座って食べよ」
「…うん」
大好きな侑士の手が、優しく頭を撫でてくれた。
手を繋いで、元来た道を戻る。

侑士
ずっと、離さないでね。
俺もずっと、
離れないから。

「すき」
優しい色の雨。
「…俺もや」
はらはらと、俺達に降り注ぐ。
「好きだよ。侑士」

風に踊る桜吹雪に隠れて、
甘い香のキスをした。

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