平和の星
□銀河に願いを「宝探し編」
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二つめ『流れ星と共に』
「わぁ…綺麗だなぁ…」
さらりと吹いている少し冷たい夜風。
夜空に広がる無数の星。
その輝きで、暗いはずの景色に綺麗な明るみが表われている。
そんな中で、カービィは夜空の流れ星を見つめていた。
彼が座っているその場所は、夜空に流れる星がよく見える一帯だった。だから、カービィは流れ星の時間帯になると、暇さえあればよくここに来ていたのだ。
「…いつ見てもすごいなぁ…」
カービィの目に映っているのは、星がたくさんある中の、何度も現れてくる流れ星だった。
キランと輝いては、あっという間に流れて消える。それが、彼の目の中でも何度も起こっていた。
そういえば、ここだったなぁ…リボンちゃんに初めて会ったの…
そう、この場所は、ある一つの冒険が始まった所でもあった。
それは、カービィが今のように星を見ていると、空から妖精が降って来たことから始まった。彼はその妖精、リボンを助けるために、デデデ大王とアドレーヌ、ワドルディのコーゼと遠い星まで冒険をしたのだ。
そんなことを思い出していると、頭の中で、ある記憶がよみがえった。
最後に…キスされちゃったんだ…リボンちゃんに…
頬に、あの時の感覚が伝わってきたかの様に感じた。途端に顔が赤くなる。
特別な感情なんてものは、カービィにはよくわからなかっただろうが、少なくとも彼女に対しての何らかの思いはあったのだろう。
「…寒ッ」
カービィの側を通った夜風は、夜がふけてきたからか、より冷たくなっていた。
そろそろ帰るか…
そう思った時だった。
突然、夜空に妙な違和感を感じたのだ。
一見、流れ星が出てきているように思われるが、どこか普通と違っていた。
キランと輝いて、流れていく流れ星…
流れていく…?
いや、こっちに近付いてる…?
そう、流れ星だと思っていた光が、段々と大きくなって、こっちに迫っているのだ。
「あ…あれって…?」
思わず呆気にとられたカービィは、接近している"何か"を見つけたまま動かなかった。
そのせいで、"何か"はカービィに激突した。
「ッつ…ったあぁいッ!!?」
分かりにくいと思うが、上記でカービィが言っているのは、「痛い」である。
カービィの方が、"何か"よりも小さかったからか、ぶつけられた彼はかなり吹っ飛んでしまった。ボールのように転がっていく。ようやく止まると、カービィはゆっくりと立ち上がった。
頭がくらくらする…
タンコブでも出来たかなぁ…?
そんなことを不安に思いながら、カービィは夜空から何が落ちてきたかを確かめようと、それに近付いた。
それは、丸い生き物だった。
カービィと同じような姿だ。
彼と違うのは、丸い手はなく、履いている茶色いブーツと、足の間の赤いリボン、赤と青のピエロが被ってるような帽子ぐらいだった。
目は閉じている。寝てるのかな?
ちょっと起こそうと思って、頬をつねってみた。だが、死んだようにびくともしない。
いや、死んでるかも知れない。流れ星と勘違いしたぐらい高い所から落ちてきたようだから、普通死んでしまうだろう。
とりあえず、ここに置いといてもどうにもならないから、家に運ぼうと思って、カービィは"それ"のブーツを持って、引っ張ろうとした。
その時だ。
"それ"の足が、ピクリと動いたのだ。カービィは驚いて、思わず後ろに下がった。
閉じていた目が、ゆっくりと開いた。大きな目だ。
「…あれ?」
"それ"はブーツを履いた足で、よろよろと立ち上がる。
「ここ…どこ…?」
どうやら喋れるようだ。それに、声からして男の子のようでもある。
「…キミ…だれ…?」
少年はかたまっているカービィを、じっと見つめた。目が目玉焼みたいに大きいせいで、何だか重圧を感じてしまう。
「ぼ…僕はカービィ!…君は…?」
「ボ…ボク?ボクは…」
すると、少年は急に黙り込んだ。名前がないのかな…?
「ボクは……マルク…」
マルク。少年はそう言った。
「マルク…?君の名前…?」
コクンと、マルクはうなずいた。彼の被っている帽子がユラリと傾く。
すると帽子の中から、一冊の本がポトリと落ちた。
「…?何それ…?」
カービィはそれをそっと拾い上げた。かなり古びた、ボロボロの茶色い本だ。表紙には何か文字のようなものが書いてあるが、カービィには読めない文字だった。
「…?ねぇ、これって何なの?」
カービィは、何故だか、うわのそらになってるマルクに聞いてみた。
「……知らない…のサ…」
「のさ?」
知らないんだ…と思うと同時に、聞き慣れない言葉が聞こえた。
「"のさ"、ってなぁに?」
「…わからないのサ…」
「…また"のさ"って言った…」
カービィの頭は混乱してきた。
突然夜空から流れ星みたいにやって来た"マルク"という少年は、変な格好で、変な本を持ってて、変な言葉を言う…
よく分からないことだらけだった。
…よし、決めた!
デデデに会わせよう!
デデデなら、何でも知ってるからなんとかしてくれる!
カービィがそう思った時には、もう夜が明ける頃になっていた。太陽が山から覗いている。
「よし、マルク!ちょっと来て!」
カービィはマルクの帽子をガッと掴んで、走り出した。マルクには手がないようだったので、掴む所がそこぐらいしかなかったんだろう。
「な…!?うわっ、わっ」
マルクはこけそうになりながらも、カービィに引っ張れながらついて行った。
こうして、二人はデデデ城へと向かって行った。