平和の星
□銀河に願いを「宝探し編」
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一つめ『古本屋にて』
「…"魔族"ねぇ…」
デデデ大王はそう呟いて、手に持っていたボロボロの本を棚に戻した。
本の背表紙には、『ヒト族の戦い』と書かれている。埃のせいで、文字が少し薄れていた。
「ちょっと、王さま、いつまで本を探してるのよ。もうすぐ閉店よ」
店の奥から、店長のバウンシーが顔を出してそう言った。彼女は、今大王が居るこの古本屋、『書星店』の店長である。ちなみに、ここに働いているのは彼女だけだ。
「おぅ、すまねぇ。あともう少しで見つかりそうなんだ」
大王は再び棚にある本を出して確認しては、戻し、また出しては戻していた。まるで同じ動作を繰り返す機械みたいだ。
「早くしてよ。あともう少しで日が暮れそうなんだから」
"日没には店を閉める"というのが、この店のモットーだ。それを決めたのは、もうすぐ三十になる、この店を継いだ彼女である。
「ちょっと…待て…よ…!お、あった!」
大王は棚から素早く本を出した。おかげで埃が辺りにひどく散っていく。
「ちょっと、散らかさないでよ」
「ゲホッ…ケホッ、す、スマン」
ボロボロの絵本だった。表紙には、『人柱アリス』という題名と、トランプのようなイラストがかかれていた。
「何それ?そんな本、見たことないわよ」
「この本は、カービィの奴が昨日ここに隠した本なんだ」
「あの子、いつの間にそんなこと…で、その本をずっと探してたの?」
「いや、目当てはこの本じゃなくて…」
大王はその絵本の一ページ目をめくった。
すると、中から一枚の紙がヒラリと下に落ちた。絵本よりもかなりボロボロだ。
「この地図なんだ」
店の奥にいたバウンシーは、ピョンピョンと跳ねながらデデデに近付いた。
「なんの地図なの?」
「宝の地図……らしい…」
「宝?」
「ああ、今朝、カービィが突然やって来て、『宝の地図見つけちゃったよ!!』なんて言うから、どこにやったんだ?って訊いたら、ここに隠したなんて言うからよ…」
「それで見つけたのが、これってゆうこと?」
「まぁ、そうだな」
「何の宝なの?」
「知らん、聞き忘れてたな…」
「カービィは知ってるのよね」
「そりゃそうだ。あんなに宝見つけたなんて言うんだからな。知らなきゃおかしいだろ」
「そのカービィは今どこに居るのよ?」
「確か、あそこだ。夜空のよく見える平地。この時間帯になると、いつもあそこに居るからな」
「この時間帯って…あぁ!?すっかり日が暮れてるじゃない!」
さっきは沈みかけていた太陽はどこにもなく、空には星が輝いていた。
「おぉ、いつの間に…」
「おぉ、じゃないわよ!はい、さっさと出て!閉店よ!」
「うわっ、ちょ…」
大王はそのまま彼女の勢いに押され、店の外に出された。途端にガチャッという鍵が閉まる音も聞こえる。
「な、なんて冷てぇんだ…俺の大王としての威厳が…」
すると、大王の首辺りに冷たい夜風が吹いてきた。
体がブルルッと震える。
「さ、寒い…とりあえず地図持ってくか…」
そのまま彼は、地図と本を持って自分の城へと帰って行った。