平和の星
□泉にて巡り逢わせ
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弟十八話『苛々』
絶望的だ
スターロッドは折られ、仲間もおらず、コピーする物もない。
自分一人で、ピリッツと闘わなくちゃならない。
無理だ…そもそも、コピーしなくては、闘いようがない。
…でも、諦めはしない。
消えていったみんなは、最後まで諦めていなかった。
みんな、信じていた。
いつもの楽しい日常が、帰って来るのを…
「終わりだよ…ピンク君…」
ピリッツはゆっくりと歩き、カービィに歩み寄った。
「…まだ終わってない!」
そうだ…まだ終わってなんかいない。ここで、終わらせちゃいけないんだ…!
ピリッツは不思議に思った。
どうしてこいつは、こんな目をしているんだろう。
芯のある凛とした目。
今まで見たことがない光が、そこにはあった。
でも、そんなことは関係ない。自分はただ、自分の憎しみに従えばいいだけ…こいつを消せばいいんだ…
その時、カービィは体を彼に向け、そのまま突進し始めた。
「だあぁぁぁぁッ!」
「…無駄…『夜塊』」
ピリッツは黒い塊を空中に生み出し、それを走って来ているカービィに飛ばした。
案の定、彼はすごい勢いで吹っ飛んだ。ボールのように地面を跳ねていく。
跳ねが止まると、うつぶせの状態になっていた。だが、目だけが見える状態で倒れていた。体はピクピクと痙攣していながらも、瞳だけはさっき感じたのと同じままだった。
「…なんて弱さだよ…そんな力で、勝てると思ってるの?…無謀だね…」
イライラする…なんでそんな目をするんだ…
やめてくれ…!
カービィは全く動かない。瞳はさっきと同様だ。
その倒れている彼に、ピリッツは段々と歩み寄った。
「…そんな力じゃ…何かを守るなんて…無理なんだよ…!」
ピリッツがそう吐き捨てたその時だった。
突然、腹に痛みが走ったかと思うと、体が猛烈な速さで吹っ飛ばされたのだ。そのまま、ピリッツは泉の水面に叩き付けられる。泉の水が、左右に分かれるように散った。
ピリッツはすぐに浮遊魔法を使い、泉から出た。突然のことに混乱していたが、目の前の光景で何が起きたか、彼にはすぐにわかった。
カービィがフラフラになりながらも立っていた。
「お前…もしかして、僕の夜塊を、口の中に…?」
「そうだよ…」
カービィは笑みを浮かびながら続けた。
「君が油断してあの黒玉を出すようにするために、あんな風に突っ込んだんだよ。まぁ、吸い込んだ後にすぐに君に当てようと思ったけど、衝撃が強過ぎて吹っ飛んじゃったけどね…」
イラつく…まさか、自分の魔法を理由されるとは…!
「まだ…終わりじゃないんだよ…!ピリッツ!」
こんな奴に…こんな奴に…
「…でも、お前はもうフラフラだ…次はもっと巨大な魔法にすればいいだけのこと…そうすれば、終わりだ…!!」
突然、ピリッツは目を閉じて、しばらく固まった。すると、体から闇があふれてくるのを感じられる。
僕は…全てを憎んだ…全てを消すことを誓った…こんな奴に…止められてたまるか…!
そして、彼は目を開けた。
カービィはあせっていた。
確かに、その通りだった。
体が、黒玉を吸い込んだ衝撃のせいで、思うように動けない。手足は震えて、立つこともつらい程だ。
また同じように黒玉を吸い込んでも、その衝撃に耐える体力はもう残ってない。
このままでは、どうしようもなかった。
その時、ピリッツが閉じていた目を急に開けた。
その目は、城で見たのと同じだった。
赤黒い、闇の目だった。
『死ンデシマエ…!「豪夜塊」!!』
突然、目の前に巨大な黒玉が現れ、カービィに向かっていった。城での魔法と同じだった。
避けられない…
やられる…!
「『超睡魔(ラージ・スリーピィウィング)』」
その詠唱が聞こえたと同時に、巨大な"夜"の塊は動かなくなった。
つい最近まで聞いたことがある声…もしかして…
カービィは後ろを振り返った。