平和の星

□泉にて巡り逢わせ
4ページ/14ページ

弟十七話『目 in 目』






痛い…

痛過ぎ…

朦朧とした意識の中、ケケはそう思った。
何が起きたのか分からなかった彼女にとって確かなのは、地上に叩き付けられた体の痛みだった。特に、蹴られた背中が痛い。

モワモワとした土埃のせいで、周りが全く見えない。そのせいで、どこからピリッツが襲ってくるか見当もつかなかった。

まぁどの道、体は背中の痛みのせいで動けないから、彼がどう来たとしてもどうしようもなかった。

「アイツ…大丈夫かな…」

するとその時、足跡が聞こえてきた。一瞬、カービィかと思ったが、それは違うことに彼女はすぐに気付いた。
聞いたことがある。あの時…操られる直前…

ピリッツだ…

土埃の中から、ゆっくりと歩いてきたのは、まぎれもなく彼だった。

「…そろそろキミも…邪魔だから消えてもらうよ…」

その時ケケは、そう言ったピリッツの目を見た。
どこか、空虚な感じがする目だ。暗くて、寒い目。その奥には、小さな点があった。
いや、点ではない。
目だ。
目の中に、また目があるのだ。しかも、それはどこか見覚えのある目だった。
赤黒く、闇に包まれた目
あの時の、メタナイトと自分の目

闇に取り憑かれた時の目…

「アンタ…もしかして…」

ケケは驚いた。まさか、こいつも…


「アンタ、本当に自分の意思でこんなことしてんの…?」

ピリッツの表情が、一瞬変わった。

「…そうだよ…」

「嘘ね」

「嘘じゃない…」

「いや、嘘よ。だって、アンタの目、アンタが操った人の目と同じなのよ…」

「違う!!」

そう叫ぶと彼は、倒れているケケの手を思いっきり踏んだ。

「イッタイぃイいッッ!」

「僕は…僕は自分の意思で…この星を消そうと……思ったんだ…」

そう呟くと、彼は痛がっている彼女の顔に自分の顔を近付けた。

「消えろ…『ライフ・ロス(生の消失)』…」









「ケケ!しっかりしてよ…!」

フラフラと歩いていたら、突然倒れてしまった彼女の側に、駆け寄ったカービィは涙声でそう叫んだ。

「泣くんじゃないわよ…男でしょ…」

「だって…」

友達が、次々といなくなっていく。自分たちの世界が壊されていく。カービィにとって、それは一番つらいことだった。

「…時間がないから、ちょっと要点だけ言うわ…」

「え…なにを…?」

「アイツは、闇に取り憑かれてる」

「…?アイツって、ピリッツ…!?」

「間違いないわ…操られたアタシだからこそ分かる…この事件、黒幕がいるわよ…」

「な…なんで…どうゆうこと…!?」

「ごめん、もう時間だわ…」

ケケの体は、既にほとんど透明になっていた。

「負けないでよ…カービィ」

「ケケ!!」


彼女の姿は、完全に消えた。
いつの間にか、名前も思い出せなくなっていた。

「そんな…」

「次は君だよ」

突然、後ろから声がした。カービィはすぐに後ろを向いた。

「ピンク君…」


 
 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ