平和の星
□泉にて巡り逢わせ
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弟十七話『目 in 目』
痛い…
痛過ぎ…
朦朧とした意識の中、ケケはそう思った。
何が起きたのか分からなかった彼女にとって確かなのは、地上に叩き付けられた体の痛みだった。特に、蹴られた背中が痛い。
モワモワとした土埃のせいで、周りが全く見えない。そのせいで、どこからピリッツが襲ってくるか見当もつかなかった。
まぁどの道、体は背中の痛みのせいで動けないから、彼がどう来たとしてもどうしようもなかった。
「アイツ…大丈夫かな…」
するとその時、足跡が聞こえてきた。一瞬、カービィかと思ったが、それは違うことに彼女はすぐに気付いた。
聞いたことがある。あの時…操られる直前…
ピリッツだ…
土埃の中から、ゆっくりと歩いてきたのは、まぎれもなく彼だった。
「…そろそろキミも…邪魔だから消えてもらうよ…」
その時ケケは、そう言ったピリッツの目を見た。
どこか、空虚な感じがする目だ。暗くて、寒い目。その奥には、小さな点があった。
いや、点ではない。
目だ。
目の中に、また目があるのだ。しかも、それはどこか見覚えのある目だった。
赤黒く、闇に包まれた目
あの時の、メタナイトと自分の目
闇に取り憑かれた時の目…
「アンタ…もしかして…」
ケケは驚いた。まさか、こいつも…
「アンタ、本当に自分の意思でこんなことしてんの…?」
ピリッツの表情が、一瞬変わった。
「…そうだよ…」
「嘘ね」
「嘘じゃない…」
「いや、嘘よ。だって、アンタの目、アンタが操った人の目と同じなのよ…」
「違う!!」
そう叫ぶと彼は、倒れているケケの手を思いっきり踏んだ。
「イッタイぃイいッッ!」
「僕は…僕は自分の意思で…この星を消そうと……思ったんだ…」
そう呟くと、彼は痛がっている彼女の顔に自分の顔を近付けた。
「消えろ…『ライフ・ロス(生の消失)』…」
「ケケ!しっかりしてよ…!」
フラフラと歩いていたら、突然倒れてしまった彼女の側に、駆け寄ったカービィは涙声でそう叫んだ。
「泣くんじゃないわよ…男でしょ…」
「だって…」
友達が、次々といなくなっていく。自分たちの世界が壊されていく。カービィにとって、それは一番つらいことだった。
「…時間がないから、ちょっと要点だけ言うわ…」
「え…なにを…?」
「アイツは、闇に取り憑かれてる」
「…?アイツって、ピリッツ…!?」
「間違いないわ…操られたアタシだからこそ分かる…この事件、黒幕がいるわよ…」
「な…なんで…どうゆうこと…!?」
「ごめん、もう時間だわ…」
ケケの体は、既にほとんど透明になっていた。
「負けないでよ…カービィ」
「ケケ!!」
彼女の姿は、完全に消えた。
いつの間にか、名前も思い出せなくなっていた。
「そんな…」
「次は君だよ」
突然、後ろから声がした。カービィはすぐに後ろを向いた。
「ピンク君…」