平和の星
□泉にて巡り逢わせ
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弟十五話『こんな性格だったっけ?』
さっきバラバラにした主砲や、床も、羽みたいなのも、戦艦そのものが消えていた。
戦艦の名前も、いつの間にか思え出せなくなっている。
これってやっぱり、あの城が消えた時と同じ…。
そんなことを考えながら、小石のようにまっしぐらにカービィは落下していた。
ということは、船に乗ってたみんなも
消えた?
でも…ケケは?
あ、でも名前覚えてるってことは…
その時、急に落下が止まった。まだ地上から随分と離れているところだ。
カービィは突然のおかしな現象に目をみはるしかなかった。
「な…なな…」
「アンタ何してんのよ?」
上からそんな声が聞こえる。カービィは逆さになったまま固まった状態で、精一杯上を向こうとした。
「あれ…ケケ?無事だったの?」
ケケを乗せた箒はゆっくりと降りてきた。
「まぁね。でもびっくりしたわよ…アンタが入って行ったドアが、いきなり爆発したんだもん。しかも艦も 急に消えるし…」
すると、ケケは浮いてる状態のカービィの足を、ガッと掴んだ。
「てゆーか、アンタ、飛べるんじゃないの?なに砲丸みたいに落ちてんのよ。死んじゃうわよ?」
突然落下が停止したのは、彼女の仕業だったということを、カービィは察した。
「大丈夫だよ。僕の体は餅みたいにやわらかいからね。砲丸みたいにはならないよ」
「…あ、そ」
そのままカービィは、箒の上に乱暴に乗せられた。そのせいで、危うく箒から落ちそうになったため、慌ててケケの髪を掴んだ。
「イタッ!なにすんのよ!」
「そ、そっちこそ!危ないじゃんか!」
「大丈夫よ、あのくらいで落ちそうになるアンタが悪いから」
「何それ!?」
「ああ、もう!そんなことはどうでもいいのよ!アイツはどこよ!あの、スピッツとかいうヤツ!」
ピリッツだけど…
そう思いながら、カービィは夢の泉の方を指差した。
「…泉?…あぁっ結界壊れてるじゃない!こうしちゃいられないわ。カービィ!」
「なに?」
「しっかりつかまっててよ…!」
そう言った途端、二人を乗せた箒は突然猛スピードで泉の方に突っ込んで行った。
サラサラと流れる水。
光り輝く粒子。
虹が少し見える。
この泉に足を踏み入れた途端、体がその虹に包まれるような感覚がした。
水が流れている床の上を、数歩、歩いてみる。その度に、パシャパシャという音と、そのせいで散る水しぶきが光り輝いていた。
不思議なもんだ。憎しみに縛られているこの体も、こんな感覚が持てるなんて…
ピリッツは上を見た。その目の先には、目的のスターロッドがある。
こんなものがあっては、この星を消すことができない。
復讐を果たせない。
彼はスターロッドがある台座までジャンプした。
もう、目的は目の前だ。
これを折ったら、この星は終わる。
ピリッツが蹴ろうとしたその時だった。
「ピリッツ!!!」
「見えた!台座の上にいるわ!」
ケケはそんなことを叫んでいる。だが、カービィの耳には入らない。
余りの速度による風の音で聞こえないからだ。
「えぇ?なんていったぁ!?」
カービィは大きな声でそうきいた。
「だぁかぁら、台座の上にアイツがいるってーの!!」
ケケはこの速さに慣れているため、カービィの声が聞こえたらしい。
だが、慣れてないカービィはやはり聞こえず、
「はぁっ?なんていったぁ!?」
苛々してきた彼女は、カービィの頭を掴み、
「とっとと行けぇっ!!!」
と言ってピリッツに向かって投げた。
「えぇええぇえぇえっっ!」
叫びながら、カービィは泉の台座の上にいる人物がはっきり見えだした。
あれは…
「ピリッツ!!!」