とある少年の再構築師

□第二章第四幕 『依頼』
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時雨は第二一学区を歩いていた。
ここは学園都市の水源とも言えるダムが数多くある学区で、飲料用、工業用に別れて、多数のパイプが学園都市全域に配給されている。
そんな重要学区に時雨は歩いていた。


「ったく……クライアントも変な依頼をするもんだ」


時は少しだけ遡る……


「時雨ー、電話鳴ってるよー」
「どっちだー?」
「お仕事の方ー」


時雨は携帯を二つ持っている。
通常用と、仕事用だ。
通常の携帯に仕事の電話が来ることもたまにあるので、次は仕事用の方で連絡するように、と仕事用の携帯を所持している。
時雨は夕凪から仕事用の携帯を受け取り、通話ボタンを押す。


「はいもしもし」
『やぁ、「陰」早速だが依頼だ』


電話の声は意外にも野太く、しかし優しそうな声だった。
こりゃまたなんか一悶着ありそうだな、と時雨は確信する。


『最近、第二一学区で不審な動きをする輩を見たという情報を聞いた』
「ちょっとまて、第二一学区だと? そこは警備が厳重なはずだが?」
『話しは最後まで聞いてくれ。……話を戻すが、君への依頼は第二一学区に行って何があったかを教えてくれ。何、こちらで警備の者には伝えてある。私服で来てもらっても構わない』
「その口調からして、テメェも合流するみたいな言い方だな」


決してクライアントに対して使う口調じゃないが、時雨と電話の声は気にせずとも話を続ける。


『まぁ私も行くつもりだからな、頼むぞ』
「はいはい、それじゃ今から向かうから、第二一学区で集合な」


電話を切ると、時雨は一方通行から渡されたコーヒーを渋々と啜った。捨てるのはもったいないからだそうだ。

そして今にいたる。


「あー……そういや第二一学区に集合なって言っただけで、ここの何処に集合って決めてなかったな……仕方ない、あの建物にいる人に聞くかー」


時雨は建物の中へと入っていく。
横には、看板があった。
貯水管理局、と。


「おや?」


中はがらんとしていた。エントランスにも、警備員すらいなく、さらにいうと、警備ロボすら見かけない。
時雨は不審に思いつつ、一旦外に出ると、クライアントと電話する。
コール音が流れる。


「なんでだ? なんで重要管理局だってのに警備ロボすらいないんだ?」


思わず独り言が出てしまうほどに、貯水管理局には人がいなかった。





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