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□Dogs....
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目の前で跪いて僕の胸元のリボンタイを結ぶ。瞬きをする度に睫毛が揺れその綺麗な顔に不覚にも胸の鼓動が速まった。

セバスチャン。

無意識に脳内で奴の名前を呼んで、自覚した瞬間、紅い瞳と視線が衝突した。


「はい?」


聴いていたのか、僕の心の声を。
僕の言葉を待っているのだろう、セバスチャンは上目遣いで見つめている。
僕は綺麗な物は好きだが、醜い物は嫌いだ。その理屈で言えば綺麗に整った顔をしているコレは好きな分類に入る訳で、こんな風に綺麗な顔で見つめられ続けると流石に恥ずかしくなる。


「坊ちゃん、如何なさいました?」


さっきは僕の心の声を勝手に盗み聞きしたくせに。
今僕が考えている事を知ってか知らずか、眉尻を下げてさも心配しているかのような表情を作って僕の額と頬に手のひらで触れる。


「熱は無いようですが、頬は熱いですね。それで、そろそろ何か仰って頂けませんか?」


何時もの胡散臭い笑みとは違い、柔らかい微笑みを浮かべ、僕に“お願い”をする。
それは“お願い”ではあるが僕に言葉を促すような口調でもある。


「坊ちゃんが教えて下さるまで此処にいますからね。」

「それは困る。」

「嗚呼、やっとお声が聞けました。」


なんて嬉しそうに言われると、こいつが悪魔だということを忘れそうになる。
何時でも駆け引きなのだ。どちらが先に折れるか否か。
しかし残念ながら今回は僕が先に折れそうだ。もうこの突き刺さるような視線攻撃には堪えられない。


「別に、無意識にお前の名前が浮かんだだけだ。特に何か用があった訳ではない。」

「今、私は坊ちゃんに口説かれているのでしょうか。」


とんでも無い事を口にすると、まるで思春期の乙女のように薄らと頬をピンクに染めて僕の手を取りその甲に唇を近付ける。
唇が触れる直前で、口付けの音を出し顔を上げそのまま手を握る。強く、それでいて強すぎない力加減で。


「拒まないんですね。」


別に嫌ではなかったからだ。
と言ってやるつもりは毛頭ない。
何だって今日は素直に色んな反応をするんだ。おかしいだろう。何時も通り嫌味の一つでも言うかと思っていたのに。


「ふふ、頬が膨らんで居ますよ。」


ぷに、と膨らんだ頬を指で潰されて空気が漏れる。



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