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□A Happy New Year!
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明けましておめでとう



と、日本では新年を盛大に祝うらしい。

その新しい年を身内と過ごしたり友人と過ごしたり、はたまた恋人と過ごしたりする、らしい。
全て、タナカ情報だ。


そう言えば、昨晩は何やら花火の音が聞こえていた。
新年だからか。英国でも一応祝っているんだな。


そんな事を暖かいベッドの中で考えながら寒そうな外をカーテンの隙間から窓越しに見る。


ベッドから出たくない。

勿論そういう訳にはいかないのだが。


しかしこの温もりの心地よさ。
また、瞼が重たくなり、視界が狭く狭くなっていく。


嗚呼、早起きをしたからアイツの驚く顔が見られると思ったのに。

どうにもこの瞼は軽くなりそうにはない。


扉をノックする音。
聞こえている、目で見て確認をしたいけれど、またこの瞼がいうことをきかない。


次に静かに開く扉。
アイツが起こしに来た。
起きているとアピールしたいのだが…
今度は体がいうことをきかない。

カーテンが完全に開かれ冬独特の淡い日射しが部屋に広がる。


僕を起こそうと声を掛けかけたアイツは、何故か黙ったまま。

やっと瞼を開けて至近距離にいた男を見て口角があがる。

何故なら、コイツが驚いた顔をしていたからだ。
普段よりも目を若干見開いて僕を見つめて一言。


「もう、お目覚めだったとは…」


ふふん、何時もなかなか起きない僕が声を掛けられる前に起きていて驚いただろう。

朝から珍しい物を見られたので、日本式に言うと今年は良い年になるかもしれない。


「坊ちゃん、2010年です、明け」

「明けましておめでとう、だろう?」


温かいベッドの中からコイツが言いたかった言葉を先に言ってやると、僕に不意をつかれたコイツは口を結んで黙って、そして一瞬考えた素振りを見せるとまた口を開いた。


「今年も、たくさん可愛がって差し上げますね。」

「ふん、それは僕の台詞だ。」


その口から出た言葉は新年早々縁起でもない事だった。

僕が言い返すと微笑みをより一層深くしていまだベッドに居る僕に覆い被さって来た。


「では坊ちゃん、本日のご予定は姫始に致しましょう。」


馬鹿な執事め。

僕が、お前の考えそうな事を調べずにいると思うか?

お前今、僕がその単語を知らないと思ってるだろう。


「言ったからな?お前、自分で言ったんだからな。男に二言はないぞ?」

「…はい?」


僕の服を脱がそうとした手が止まり、赤い瞳で僕を見詰め、間抜けな返事。

予想外だったんだろう。


「ちょっ、坊ちゃっ、ん!?」

「姫始、したいんだろう?」


覆い被さっていたコイツを力一杯引っ張って形成逆転、僕の体温で温まったベッドに沈む悪魔な執事。
その体に跨る僕。


「誤解ですっ私が坊ちゃんに…」

「知っているか?」


何を?と言いたげな狼狽えた目で僕を見上げる。

トドメを刺す、単語を耳元で囁く。


「このサイトは、お前が受けでも良いんだ。」


瞬間青ざめる、組み敷かれた男の顔。

その表情を見て、白黒の服に手をかける。もう、制止の言葉も何もかも無視。


新年には“お節料理”というものを食べるらしい。
英国人の僕にはよくわからない食べ物なので、僕はコイツを頂く事にする。


A HAPPY NEW YEAR

部屋にはセバスチャンの甘い声が響いていた。




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