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□my dear....
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空を見上げた貴方が綺麗だった。

春風に吹かれてなびいた蒼い髪。
絡まった桜色の花弁がアクセント。

声を掛けるのに戸惑った。
あまりにも儚げで、私のような者が触れれば消えてしまいそうで。

私の気配に気が付いた貴方が振り向き、近くに来いと誘う。
その言葉に私は内心嬉しく傍に寄り添った。

まだ幼さの残る横顔がこの雰囲気を作り出しているのだと思うと少し違和感。
それでもその雰囲気の似合う貴方は、空を映していたその瞳で私を捕らえる。
澄んだ瞳に私は映って良いのだろうか。

らしくもなく感傷的になり、その瞳から逃げるように顔を背けた。

何故逃げる、クスクスと面白そうに笑いながら私の頬に触れてまた貴方に向かされる。

嗚呼、また映されてしまった。

身長も私と然程変わらないくらいに成長した貴方に私は必要なのでしょうか?

御召替えもご自分でされて、何でも一人でなさる。それを淋しく思っていた。

そんな顔をするな、そう言って貴方は私の頬に口付けてすっかり広くなったその胸板に私を抱く。
この温かさや少し強くなったが心地好い男性特有の香り。
それらに包まれると、貴方が私の傍に居てくださると安心する。

それをきっと勘の鋭い貴方のことですから御存知なのでしょう。

私をこんなにも弱くしてしまったのは貴方で。
貴方が居なければ私は脆く崩れてしまう。

私の黒く醜い髪を撫でる貴方の大きな手を振り払いたい。貴方が汚れてしまうから。
それでも触れていて欲しいと欲深く思い振り払えない。

私の心は貴方が作った物。
作られた心を満たすのは貴方だけ。



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