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□colours....
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窓の外に見える木々は赤色や黄色に色付き、風が吹けばヒラヒラと葉が落ちる。
中庭ではクリスマスローズの芽が顔を出し始めている。
そんな景色を背にシエルは今日も淡々と執務をこなす。
ドカーンとかバキバキとか、何かが破壊される時に出る音を除けば屋敷は平和そのもの。
「チッ…」
もう慣れたはずの騒音が今日はやけに煩く感じ、シエルが苛々している。
集中力が切れてきたとシエルも自覚し、一息つこうと立ち上がった。
そのまま窓に近付き紅葉を眺めていると、それが次から次へと倒れていく。
「な、何だ、フィニか?」
シエルが想像した通り、美しく色付いた木々を倒しまくっているのはフィニだった。
フィニは何か言葉にならない言葉を叫びながら猛烈な速さで中庭を走り回っていて、ぶつかる木をことごとく倒していく。
中庭の惨状に目眩を覚えたシエルの視界に入った人物はフィニを追い掛けているバルドであった。
バルドもまたフィニの名前を叫びながら必死だ。
「何をやってるんだ…」
シエルが溜め息混じりに呟いた瞬間、その目を見開き固まった。
とうとう追い詰められたフィニにバルドが、キスをしたから。
シエルが呆然と見ているのに気が付いていない彼らは段々と口付けを激しくしていく。
あんなに必死に逃げていたフィニも今は大人しくバルドの腕の中。
シエルが背後からの気配にハッとした時、振り向く前にモノトーンカラーの腕がシエルを抱き締めた。
「坊っちゃん、何をご覧になっていらっしゃるんですか?」
「…急に入ってくるな。」
「おや、頬が赤くなっていますよ。どうされたんです?」
耳元で囁く煩い執事に余計苛々して、シエルが腕から逃れようと暴れる。
それを許さないと言う替わりにシエルの身体に巻き付けた腕に少し力を入れて暴れる体を止める。
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