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□be mine forever
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「エリザベス様に、ですか?」

「は?」


僕の眼帯を取りながら訊かれ、突然の事に間抜けな反応を返してしまった。
エリザベスに?何を?


「薔薇ですよ。バレンタインデーでしょう。」

「あ、ああ…」


エリザベスにはセバスチャンに選ばせた無難な物を贈っただろうが。

僕の腕に触れたままコイツの手が震えている。


「エ…エリザベス様が…喜んで下さると良いです、ね…」

「おい…何で泣きそうになってるんだ。」


顔を覗き込んだら潤んだ瞳を見つけた。


「そうですよね、私は男で執事で悪魔で下僕ですもんね、坊ちゃんがわざわざ街まで行くなんて、」

「セバスチャン、何を勘違いしてる?」

「は…い?勘違い…?」


わざわざ街まで行ったのは、屋敷の薔薇を摘んだらお前に見付かって問い詰められたりするからだ。

一度深呼吸をして、3本だけの薔薇の花束を握りしめ目の前にいるコイツにそのまま突き出した。


「…お前に、だ。」

「え…?」


突き出された花束と僕の顔を交互に見ているだけで受け取る素振りを見せない。
何時までもこんな風にじっとしているのも格好が付かないので、もう一度、そのまま手を突き出した。


「ん!」

「あ…ありがとうございます。」


漸く受け取ったのを確認して手を下ろし、薔薇の本数の理由を言おうとしたら、先に口を開かれた。


「何故、3本なんですか?」

「お前が僕に召喚されて3年目のバレンタインだからだ。」

「おや…意外にロマンチストですね。」


僕の言葉に驚いたような表情を浮かべてすぐ、長い腕で抱きしめられた。


「すごく嬉しいです、ありがとうございます。」

「来年も楽しみにしてろ。」

「はい。」


嬉しそうな声色を聴いて、
今は3本の紅色の薔薇が、お前が抱えきれないほどの大きな花束になってもずっと、傍に居ろと命令のようなお強請りをした。



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